悪魔とそのおばあさん





悪魔とそのおばあさん メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
8.3/10 - 84
悪魔とそのおばあさん
大きな戦があり、王様にはたくさんの兵士がいましたが、給料を少ししかあげなかったので、兵士たちは暮らしていけませんでした。それで三人の兵士が内緒で逃げることに決めました。一人の兵士があとの二人に、「つかまれば首つり台につるされるぞ。どうやってやるんだ?」と言いました。もう一人が、「あの大きな麦畑を見ろよ。あそきに隠れたら、誰も見つけられないさ。軍隊はそこに入ってはいけないんだし、明日出ていくんだからね。」と言いました。三人はうまく麦の間に這っていきましたが、ただ軍隊は出発しないで、そのまわりにい続けました。三人は二日二晩麦の中にとどまって、とてもお腹がすき、死ぬばかりになりました。しかし、もし出ていけば、死ななくてはいけないのが確かでした。それで三人は、「ここで惨めに死ななければならないなら、逃げて何の役に立つんだ?」と言いました。

しかし、火のような竜が空を飛んできて、三人のところに下り、どうしてそこに隠れているのかと尋ねました。三人は、「おれたちは、給料がひどすぎるから逃げてきた三人の兵士なんだ。それで今、ここにいれば飢え死にしなくてはならないだろうし、出て行けば首つり台にぶらさがらなくてはならないのさ。」と答えました。「もしわしに7年仕えてくれれば」と竜は言いました。「だれもお前たちをつかまえないように軍隊の中を連れ出してやるぞ。」「おれたちには選べないよ。受けるしかない。」と三人は答えました。

それで、竜は三人を爪でつかむと、軍隊の上の空中を運び去り、そこから離れた地面にまた下ろしました。しかし、竜は他ならぬ悪魔でした。悪魔は三人に一本の小さなムチを渡し、「そのムチをぴしゃりとうつと、ほしいだけいくらでもまわりに金がとびだし、お前たちは大だんなのような生活をし、馬をもって馬車ででかけることができる。だが、7年経ったら、お前たちはおれのものになるんだ。」と言いました。それから悪魔は三人の前に本を出し、三人とも署名させられました。「だが、先ずお前たちになぞを出そう。」と悪魔は言いました。「それでそのなぞを解けたら、お前たちは自由でわしの力から解放されるとしよう。」それから竜は飛んで三人から去って行きました。

三人はムチを持ってでかけ、金をたっぷり持ち、ぜいたくな服を注文し、世界を旅しました。どこにいようと三人は楽しくぜいたくに暮らし、馬に乗り、馬車ででかけ、飲んで食べましたが、悪いことはしませんでした。時はあっというまに過ぎ、7年が終わりに近づいてきたとき、二人の兵士はひどくくよくよして不安になりましたが、三人目の兵士は気楽に考えて、「兄弟、こわがることはないよ。おれにはまだ知恵がある。なぞを解いてみせるさ。」と言いました。三人は野原にやってきて座り、二人は悲しそうな顔をしていました。

するとおばあさんが三人に近づいて来て、どうしてそんなに悲しいのか尋ねました。「そうだなあ」と三人は言いました。「それがおばあさんとどんな関係があるんだ?結局、あんたにはどうにもできないんだもの。」「そうかな?」とおばあさんは言いました。「いいから困ってることを打ち明けてごらんよ。」それで三人は、7年近く悪魔に仕えてきて、悪魔は干し草のように金をくれたんだが、悪魔に自分を売ったんだ、それで7年の終わりになぞを解けなければ悪魔のものにされてしまう、と話しました。

おばあさんは、「もし救って欲しいなら、だれか一人が森へ入って行くんだよ。そこで小さな家のように見える崩れた岩に着くから、その家に入りなさい。そうしたら助けてもらえるよ。」と言いました。二人のくよくよしている兵士は心で、「そんなんじゃやはり助けにならないよ。」と考えて、今いるところにとどまりましたが、三人目の陽気な兵士は立ち上がり、歩き続けて森へ入り、岩の家を見つけました。その小さな家にはとても年とったおばあさんがいて、悪魔の祖母でした。それで兵士に、どこからきたのか、ここに何の用があるのか、と尋ねました。兵士はおばあさんにことの次第を話しました。おばあさんは兵士を気に入ったので、可哀そうに思い、助けてやろうと言いました。おばあさんは穴倉の上にのっていた大きな石を持ち上げ、「そこに隠れているんだ。ここで話されることが全部聞こえるからね。ただじっとして、動かないんだよ。竜が帰ってきたら、私がなぞのことをきいてみるよ。あの子は私に何でも話すんだ。だから何と答えるかよくおきき。」

夜の12時に竜はそこへ飛んできて、夕食を頼みました。おばあさんは食卓の用意をし、食べ物と飲み物を出しました。それで竜は喜んで、二人は一緒に飲んで食べていました。二人で話しているうちに、おばあさんは、今日は一日どうだったか、魂はいくつとれたか、尋ねました。「今日は何もあまりよくいかなかったよ。」と竜は答えました。「だけど、三人の兵士をつかまえてあるんだ。あいつらはまちがいなくおれのものだよ。」「本当に?三人の兵士ねえ、ずる賢いよ。まだ逃がれるかもしれないよ。」悪魔は嘲りわらって、「あいつらはおれのものだよ。なぞを出すんだ。あいつらにはぜったい解けやしないさ。」と言いました。「どんななぞだい?」とおばあさんは尋ねました。「話すとね、大きな北海に死んだツノザメがいる。それを焼き肉にするんだ。クジラのあばら骨は銀のスプーンで、穴のあいた年とった馬のひづめはワイングラスにするんだ。」

悪魔が寝てしまうと、年とったおばあさんは石を上げて、兵士を出しました。「全部ちゃんと聞いたかい?」「はい」と兵士は言いました。「十分わかったので、大丈夫です。」それから、兵士は別の道を通らなくてはいけないので、窓からそっと出て、大急ぎで仲間のところへ行きました。兵士は二人に、悪魔がおばあさんに裏をかかれたこと、悪魔の言っていたことからなぞの答えがわかったことを話しました。それでみんな喜んで、元気よくなり、ムチをとってたくさん金を出したので、金はそこらじゅうにあふれました。

まるまる7年が過ぎ、悪魔は本を持ってやってきて、署名を見せて、「これからお前たちを地獄に連れて行く。そこでお前たちに食事を出す。どんな焼き肉を食べなくちゃいけないか当てることができれば、お前たちは自由で取引からも解放されるし、ムチももっていてよい。」と言いました。すると最初の兵士が初め、「大きな北海に死んだツノザメがいる。 それが間違いなく焼き肉だ。」と言いました。

悪魔は怒って、「フン、フン、フン」とつぶやき始めました。それから、二人目の兵士に、「だが、おまえたちのスプーンは何だろな?」と尋ねました。「クジラのあばら骨。それが銀のスプーンになる。」悪魔はしかめ面をして、また「フン、フン、フン」と唸りました。三人目の兵士に、「それで、何がワイングラスになるかもわかるのか?」と言いました。「年とった馬のひづめがワイングラスになる。」すると、悪魔は大きな叫び声を上げて飛んでいき、三人をもう好きなようにできなくなりました。しかし、三人の兵士はムチをとっておき、好きなだけたくさんお金を打ち出して、死ぬまで幸せに暮らしました。


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