かぶ





かぶ メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
8.1/10 - 19
かぶ
昔、二人の兄弟がいて、二人とも兵士として務めましたが、一人は金持ちで、もう一人は貧乏でした。すると貧しい男は、貧乏から抜け出そうと思い、兵士の服を脱ぎ捨て、お百姓になりました。男は少しばかりの土地を掘り起こし、かぶの種を播きました。種は芽を出し、一つのかぶが大きく丈夫に育って、みるみるうちにだんだん大きくなっていき、とどまる様子がありませんでした。それでかぶの王女と呼んでもよいくらいでした。というのは後にも先にもそんなに大きいかぶは見られないだろうからです。とうとうかぶは巨大になり、それだけで荷車いっぱいになったので、荷車を引くのに牛が二頭必要になりました。お百姓はかぶをどうすればよいか、そのかぶが自分にとって幸か不幸か、まるきり見当がつきませんでした。

おしまいに、(売ったら、大した金にもなるまい、自分で食べたとしても、まあ、小さなかぶだって味は同じだ、王様のところへ持って行って差し上げた方がよさそうだ)と考えました。そこで荷車にかぶを積み、二頭の牛に引かせて、王様のところへ持って行って贈り物にしました。「何とも珍しいものだ」と王様は言いました。「不思議な物はたくさん目にするが、こんなおばけかぶは初めてだ。どんな種からこのかぶはできたのかね?それともお前は幸運の申し子でたまたまそうなったのかね?」「いえいえ」とお百姓は言いました。「申し子なんかじゃございませんとも。私は貧しい兵士で、もう暮らしが立たなくなったので兵士の服を釘にかけ、畑を耕すことにしたのです。」

「私には兄が一人いて、その兄は金持ちで王さまもよくご存知ですが、私ときたら、何もないので、誰も目にとめてくれません。」それで王様は可哀そうに思い、「お前を貧乏から救いあげ、贈り物をやって金持ちの兄と同じくしてやろう」と言いました。それから王様は、たくさんの金貨と土地と牧草地と家畜をお百姓に与えてすごい金持ちにしたので、兄の財産は比べものにならなくなりました。金持ちの兄は、貧乏な弟がたった一つのかぶで手に入れたもののことを聞くと、羨ましく思い、なんとかして自分も同じような幸運を得られないものかと考えました。

ところが、兄は弟よりもっと賢いやり方でそれにとりかかり、王様はお返しに弟よりもっと大きな贈り物をくれるだろうと信じ込んで、金と馬をもって王様のところへいきました。弟は一つのかぶであんなに貰ったのだから、こういう素晴らしいもののお返しならどんなものをいただけるだろうと期待したのです。王様は贈り物をうけとり、お返しには、あの大きなかぶ以外に珍しくすばらしいものはない、と言いました。

それで金持ちの男は弟のかぶを荷車に積んで家に持って帰らせるしかありませんでした。家で、兄は誰にこの怒りをぶつけたらよいのかわかりませんでしたが、しまいに悪い考えが浮かびました。弟を殺そうと決めたのです。兄は殺し屋を雇い、待ち伏せさせておき、弟のところへ行って、「なあお前、隠された宝物のことを知ってるんだが、一緒に掘り出して山分けしよう。」と言いました。弟は承知して、疑わずについていきました。二人が歩いていると殺し屋が弟に襲いかかり、縛って木に吊るすところでした。しかし、ちょうどこうしているときに、大きな歌声と馬のひづめの音が遠くから聞こえてきました。それで殺し屋たちは仰天し、とらえた男を急いで袋に押し込んで枝に吊るし、逃げて行きました。ところで、弟は吊るされたままごそごそやって袋に頭を出せるだけの穴を開けました。

やって来た男は他ならぬ旅をしている学生でした。その若者は歌を歌いながら楽しく森で馬を乗り回していたのです。上にいる弟は下を通っている男を見て、叫びました。「やあ、君は良い時に来たね。」学生は周りを見回しましたが、声がどこから来ているのか分かりませんでした。とうとう、「僕に呼びかけているのは誰なんです?」と言いました。

すると返事が木の上からきました。「目をあげてごらん。この上で知恵の袋に入っているのさ。ちょっとの間にすごいことを覚えたんだ。これに比べたら学校で習うことなんてお笑いだよ。もうじきありとあらゆることを覚えてしまい、誰も及ばないほど賢くなって下りていくんだ。星座や風の動き、海の砂、病気の治し方、薬草の使い方、鳥や石もみんなわかってるさ。あんたも一度ここに入れば、どんな崇高なことが知恵の袋から出て来るか感じ取れるさ。」

これを聞いて学生は驚いて、「あなたに会えてよかったなあ。私もちょっと袋に入れてもらえないですか?」と言いました。木の上にいる男は気がすすまなさそうに、「ちょっとなら入れてあげよう。あんたが金を払っていい言葉をかけてくれたらね。だけど、あと一時間は待っていなくちゃだめだよ。袋を貸す前にあと一つ覚えなくちゃいけないんだ。」と言いました。学生はちょっと待っていましたがじれったくなり、すぐ入らせてくれませんか、と頼みました。早く知恵が欲しくてたまらなくなったのです。

それで、上にいる男はとうとう頼みに折れたふりをして、「知恵の家から出るから、綱を引きおろしてくれ、そうしたらあんたが入れるから。」と言いました。それで学生は袋を下ろし、結び目をほどいて弟を自由にしました。それから、「さあ、すぐに私を引き上げてください」と叫び、袋に入ろうとしました。「待てよ、それじゃだめなんだ」と弟は言い、学生の頭をつかんで袋の中でさかさまにし、しっかり縛ると、知恵の弟子を綱で木の上に引き上げました。そうして袋を揺らしながら、「どうだい?君、そら、もう知恵がやってくるのを感じるだろう。君は貴重な経験をしているぜ。もっと賢くなるまでじっとしてるんだぜ」と言いました。そうして学生の馬にまたがると行ってしまいました。しかし、一時間すると、人をやって学生を出してやりました。


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