小人の使い





小人の使い メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
8.4/10 - 29
小人の使い
仕立て屋と金細工師が一緒に旅をしていました。ある晩、太陽が山のかげに沈んでしまったとき、二人に遠くの音楽の音が聞こえてきて、だんだん音がはっきりしてきました。聞きなれない響きでしたが、とても楽しそうで、二人は疲れをすっかり忘れ、急いで先へ進みました。月がもう昇ってしまったころ、二人はある丘に着きました。その丘で、大勢の小人の男女がお互いの手をとって、とても楽しそうに喜んで踊り回っているのが見えました。小人たちは踊りに合わせてとてもすてきに歌っていて、二人の旅人が聞いた音楽はそれでした。小人たちの真ん中に他の人たちより背の高いおじいさんが座っていました。おじいさんはまだらの上着を着て、白いあごひげが胸の上までたれていました。二人は驚きのあまり立ったまま踊りを見ていました。おじいさんが二人に入るように合図をして、小人たちがすすんで輪を開けてくれました。金細工師は、こぶがあり、背中にこぶのある人が向う見ずなように、入っていきました。仕立て屋は初め少しこわくてひっこんでいましたが、みんなとても楽しそうなのを見ると、勇気を奮い起してあとをついていきました。輪はまたすぐ閉じ、小人たちは激しく跳びあがって歌ったり踊ったりし続けました。

ところがおじいさんはベルトに下げている大きなナイフをとり研いで、刃を十分鋭くすると、見知らぬ二人を見まわしました。二人はびくびくしましたが、あまり考えている暇はありませんでした。というのはおじいさんは金細工師をつかむとものすごい速さで頭の髪をつるつるに剃り落としたからです。それから同じことが仕立て屋にも起こりました。しかし、おじいさんが仕事を終えた後、二人がすすんでそれをやらせ、暴れなかったのは行儀がよかったぞ、とでも言うように二人の肩をやさしくたたいたので、二人はこわくなくなりました。おじいさんは片方にある石炭の山を指差し、ポケットにその石炭を詰めろと旅人に身振りで示しました。石炭が何の役に立つのか分かりませんでしたが、二人とも従いました。

そのあと二人は夜の宿を探して道を進みました。二人が谷に入ると、近くの修道院の時計が12時を打ちました。すると歌が止み、あっというまに全部消えてしまいました。そして丘は月明かりにひっそりとあるだけでした。

二人の旅人は宿を見つけ、わら布団に寝て上着で体をおおいましたが、疲れ果てていたのでそうするまえに上着から石炭をとるのを忘れました。手足に重さがかかって二人はいつもより早く目覚めました。ポケットの中を探ってみて、石炭ではなく純金でいっぱいなのを見て、自分の目が信じられませんでした。また幸いに頭の髪やあごひげも前と同じにふさふさになっていました。二人はもう金持ちになりましたが、金細工師の方が、欲張りな性格のとおり、ポケットに多く詰めていて、仕立て屋の2倍金持ちになりました。欲張りな男というのはたくさんあってももっと欲しがるもので、金細工師は仕立て屋に、もう一日待って、もう一度夜でかけて丘のじいさんからもっとたくさん宝をもらってこよう、と言いました。仕立て屋は断って、「これで十分で満足している。もう親方になってわが親愛なる人(と仕立て屋は恋人を呼んだのです)と結婚するよ。おれは幸せだ。」と言いました。

しかし、仕立て屋は金細工師に喜んでもらうためにもう一日とどまりました。夜になると、金細工師は、たくさん詰め込むことができるように肩に2,3袋をかけて、丘に続く道を行きました。前の夜と同じに、歌ったり踊ったりしている小人たちを見つけ、おじいさんはまた男の毛をつるつるに剃り、石炭をとるように合図しました。金細工師は、ためらうことなく早速、袋に入るだけたくさん詰め込み、すっかり喜んで戻り、上着で体をおおいました。「たとえ金が重くのしかかっても、喜んでがまんするよ。」と金細工師は言いました。そして、朝になったらものすごい大金持ちになって目覚めるんだという甘い期待を抱きながら、とうとう寝入りました。

目を開くと、急いで起きあがってポケットを調べました。しかし、何回手を入れても黒い石炭の他は何もポケットから引っ張り出せなかったときはなんと驚いたことでしょう。(前の晩にもらった金はまだそこにあるさ)と考え、行って持ってきました。しかし、それもまた元の石炭に変わっているのを見てどんなにおどろいたことでしょう。金細工師はほこりのついた黒い手で額を打ちました。そのとき自分の頭が全部毛がなくてつるつるなのに気づきました。ひげがあったところも同じでした。しかし災難はまだ終わりではありませんでした。いま初めて気づいたのですが、自分の背中のこぶに加えて、同じ大きさの2つ目のこぶが胸にできていました。それで、金細工師は自分の欲張りに罰がくだったのだとわかり、大声で泣き出しました。やさしい仕立て屋は、この泣き声で目を覚まし、できるだけこの不幸な男を慰め、「君は旅をしているときの仲間だ。僕と一緒にいて僕の財産を一緒に使おう。」と言いました。仕立て屋は約束を守りましたが、可哀そうな金細工師は死ぬまで二つのこぶをつけていなくてはならず、つるつる頭を帽子でおおっていなければなりませんでした。


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