黄金のがちょう





黄金のがちょう メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
8.3/10 - 180
黄金のがちょう
三人の息子がいる男がいました。末っ子はアホッコと呼ばれて、事あるごとにさげすまれ、からかわれ、あざ笑われました。

さて、一番上の息子が森へ木を切りにいこうとして、出かける前におなかがすいたり喉がかわいたりしないようにと母親がきれいな甘いケーキと葡萄酒をひと瓶持たせました。

森へ入ると、白髪の年とった小人に会いました。小人は「こんにちは、ポケットからケーキをひとつくれませんか?それから葡萄酒を一口飲ませてください。私はとてもおなかがすいて喉が渇いているのです。」と言いました。しかし、賢い息子は「もしお前にケーキと葡萄酒をあげたら、私のがなくなるじゃないか、あっちへ行けよ」と答えて、小人を残して、行ってしまいました。

しかし、木を切り倒し始めるとまもなく手元が狂って、腕が斧で切れ、家へ帰って包帯をしなければいけなくなりました。これは白髪の小人がやったことでした。

このあと、二番目の息子が森へ入りました。そして、母親は一番上の息子と同じように、ケーキと葡萄酒をあげました。白髪の小人が同じように息子に会い、ケーキを一切れと葡萄酒を一口頼みました。しかし二番目の息子も十分賢く、「お前にあげたら自分のがなくなるよ。あっちへ行け。」と言って、小人をおいて行ってしまいました。ところが罰が遅れないでくだって、木を2,3回打つと、斧は脚にあたり、家に連れ帰ってもらわなければなりませんでした。

それでアホッコは、「お父さん、木を切りに僕を行かせて。」と言いました。父親は「お前の兄たちはそれで怪我をしたんだぞ。お前は手をだすな。お前は木こりのことを何も知らないんだよ。」と答えました。しかし、アホッコがいつまでも頼むので、とうとう「じゃあ行きな。怪我をしたらもう少し賢くなるだろうよ。」と父親は言いました。母親は水で作り灰で焼いたケーキと、酸っぱいビールをひと瓶もたせました。

森へ着くと、白髪の年とった小人が同じように会って、挨拶すると、「ケーキを一切れと瓶から一口ください。私はとてもおなかがすいて喉が渇いているのです。」と言いました。

アホッコは、「灰のケーキと酸っぱいビールしかないが、それでよかったら、一緒に座って食べましょう。」と答えました。それで二人は座り、アホッコが灰のケーキを引っ張りだすとそれは素敵な甘いケーキになり、酸っぱいビールは上等の葡萄酒になっていました。それで二人は飲んで食べました。そのあと、小人は、「お前はやさしい心をもっていて、持っているものを喜んで分けるから、幸運をあげよう。あそこに古い木があるが、それを切ってごらん。そうすれば根のところに何か見つかるよ。」と言いました。それから小人は別れていきました。

アホッコは、行ってその木を切りました。そして木が倒れると、純金の羽をしたがちょうが根の中に座っていました。アホッコは、がちょうを持ち上げ、一緒に持って行き、その晩泊ろうと思った宿屋に行きました。さて、宿の主人には三人の娘がいましたが、そのがちょうを見てそんな素晴らしい鳥は何だろうと知りたく、また金の羽根の一枚を欲しいと思いました。

一番上の娘は「すぐ羽根を一枚引き抜く機会が見つかるわ」と思い、アホッコが外出するとすぐがちょうの翼を掴みました。しかし、指と手ががちょうにぴったりくっついたままになりました。

二番目の娘がすぐ後で来て、どのようにして自分の羽根を手に入れるかばかり考えていましたが、姉に触れた途端、ぴったりくっついてしまいました。

とうとう三番目の娘も同じ目的でやってくると、他の二人が「離れていて、お願いだから、離れて!」と叫びましたが、なぜ離れていなければいけないのかわかりませんでした。

「他の二人がそこにいるんだから、私もいた方がいいわ。」と考え、二人に駆け寄りました。しかし姉にふれるとすぐ、しっかりくっついたままになりました。それで、三人はがちょうと一緒に夜を過ごさなければなりませんでした。

次の朝、アホッコはがちょうを脇の下に抱え、がちょうにぶら下がっている三人の娘のことは気にしないで、出発しました。それで、娘たちは、アホッコの脚が向くまま、はい左、はい右、とずっとアホッコを追いかけるしかありませんでした。

野原の真ん中で牧師と会いました。牧師はこの行列を見ると、「恥知らずな、このろくでなし娘たちめ、どうしてお前たちはこの若い男を追いかけて野原を走り回っているんだ?礼儀にかなったことか?」と言い、同時に引き離すために手で一番下の娘を掴みました。しかし、牧師は娘に触れるとすぐ、これもまたぴったりくっついてしまい、自分も後ろから走るしかありませんでした。

まもなく寺男が通りがかり、主人の牧師が三人の娘のあとを走っているのを見ました。これを見て驚いて、「ねえ、牧師さん、そんなに急いでどこへ行くんですか―?今日は洗礼があるのを忘れないでくださいよ。」と叫びました。そしてあとを追いかけて、牧師の袖をとりましたが、寺男もまたしっかりくっついてしまいました。五人がこんなふうに次々とつながってとことこ走っている間に、二人の農夫がくわをもって畑からきました。牧師は農夫に叫んで、自分と寺男を離してくれと頼みました。しかし、農夫たちが寺男に触れた途端、ぴったりくっつき、今度はアホッコとがちょうのうしろを走るのが七人になりました。

その後まもなく、アホッコはある町にやってきました。そこでは、あまりにきまじめで誰も笑わせることができない娘がいる王様が治めていました。それで王様は娘を笑わせることができた者は娘と結婚してよいというおふれを出していました。アホッコがこれを聞いて、がちょうとがちょうにつながった行列と一緒に王様の娘の前に行きました。王女さまは、七人が次々とつながってどんどん走っているのを見ると、すっかり大きな声で笑い始め、笑い止まないのではないかと思うくらい笑い続けました。

それでアホッコは娘を妻に欲しいと申し出ましたが、王様はこの婿が気にいらず、さまざまな言い訳をして、「お前はまず地下貯蔵庫いっぱいの葡萄酒を飲める男を出してこなければならない。」と言いました。

アホッコは、きっと自分を助けることができる白髪の小人のことを思い、森へ入って行きました。すると自分が木を切り倒した同じ場所に、一人の男が座っているのが見えましたが、とても悲しい顔をしていました。アホッコが「何をそんなにひどく考えているんだい?」と尋ねると、男は「とても喉が渇いてたまらないんだ。冷たい水は我慢できないし、一樽の葡萄酒はいま飲んでしまったばかりで、それも私には焼け石に水でしかないよ。」と答えました。

「それそれ!手伝えるよ。僕と一緒にきてくれ、そうしたら満足するよ。」とアホッコは言いました。アホッコが男を王様の地下貯蔵庫に連れていくと、男はとても大きな樽の上にかがみ、わき腹が痛くなるほど飲みに飲んで、その日が終わらないうちに樽全部をカラにしてしまいました。それで、アホッコはもう一度花嫁を欲しいと求めましたが、王様は、みんながアホッコと呼ぶこんなみっともないやつが、娘をさらっていくとは悔しくて、新しい条件を出しました。つまり、パンをひと山まるまる食べることのできる男を見つけなければいけない、というのでした。アホッコは長く考えていないで、まっすぐ森へ入って行きました。森の同じ場所に、体を革紐で縛り上げて、すさまじい顔をしている男がいて、「ひと釜分まるまるロールパンを食べたんだが、おれみたいに腹が減っていてはそれが何の役に立つんだ。腹はからっぽのままだ。それで飢え死にしたくないなら自分を縛りあげなくてはならん。」と言いました。

これを聞いてアホッコは喜び、「立って一緒に来てくれ。腹いっぱい食わしてやるよ。」と言いました。アホッコは男を王様の宮殿に連れていくと、王国中の小麦粉がみんな集められ、大きなパンの山が焼かれました。森から来た男はその前に立ち、食べ始め、一日の終わりまでには山がまるまる消えてしまいました。それでアホッコは花嫁が欲しいと3回目求めました。しかし王様はまた逃げ道を探し、陸の上と水の上を航海できる船を注文しました。そして「その船でもどってきたらすぐ、娘を妻にあげよう。」と言いました。

アホッコはまっすぐ森へ入って行くと、前にケーキをあげた白髪の小人が座っていました。アホッコの欲しいものを聞くと、小人は「お前が食べ物と飲み物をくれたから、その船をやろう。こうするのはおまえがかつて私に親切だったからだよ。」と言いました。それから小人は陸と水を航海できる船をくれました。王様はそれを見たとき、もう娘をやらないわけにはいきませんでした。結婚式が行われ、王様が死んだあと、アホッコは王国を受け継いで長い間妻と一緒に幸せに暮らしました。


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