もの知り博士





もの知り博士 メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
8.5/10 - 53
もの知り博士
昔、クラブという名の貧しいお百姓がいました。お百姓は荷車にたきぎを積んで二頭の雄牛にひかせて町へ行き、二ターラーで博士に売りました。お金が渡されているとき、たまたま博士は食卓についていて、博士が良い物を食べたり飲んだりしてるのをお百姓は目にし、自分もああいうものが欲しいもんだ、自分も博士だったらよかったなあと思いました。それでしばらくそこにたたずんでいましたが、とうとう、私も博士になれるもんでしょうか、と尋ねました。「ああ、なれるとも」と博士は言いました。「そんなのはすぐになれるさ。」「どうすればいいのですか?」とお百姓は尋ねました。「まず、口絵に雄鶏があるABCの本を買いたまえ。」

「二番目に荷車と二頭の牛をお金に変え、自分の服や、他に医者にかかわる物を全部買うんだ。三番目に『私はものしり博士です』という看板を作ってもらって家の戸口に立てるんだよ」お百姓は言われたことを全部やりました。しばらく、といっても大して長くないのですが、人々を診たあと、金持ちの領主がお金を盗まれました。すると、領主はこれこれの村にものしり博士がいて、お金がどうなったかわかるにちがいないときかされました。そこで馬車に馬をつながせ、その村にでかけ、クラブに、あなたがものしり博士ですか、と尋ねました。「はい、そうです」とクラブは言いました。「それでは、私と一緒にいき、盗まれたお金を取り戻してもらいたい」と領主は言いました。「いいですとも、だが、妻のグレーテも一緒に行かなくてはなりません。」領主は承知して、二人とも馬車に乗せ、みんなで一緒にでかけました。

その貴族の家に着くと、食卓が整えられ、クラブは座るように言われました。「はい、では妻のグレーテも一緒に」とクラブは言って、妻と一緒に食卓につきました。

最初の召使がご馳走をのせた皿をもってくると、お百姓は妻をつついて「グレーテ、あれが最初だよ」と言いました。それが最初の料理を運ぶ召使だという意味だったのです。ところが、召使の方は、あれが最初の泥棒だ、と言っているのだと思い、実際その通りだったので、ぎょっとしました。それで、外にいる仲間に、「あの博士は何でも知ってるよ、まずいことになりそうだ、おれが最初だと言ったんだよ」と言いました。二番目の召使は全く入って行きたくありませんでしたが、どうしようもありませんでした。そこで料理を持って入っていくと、お百姓は妻をつつき、「グレーテ、あれが二番目だ」と言いました。この召使も同じようにびっくりし、そそくさと出て行きました。

三番目の召使も同じ目にあいました。というのはお百姓はまた「グレーテ、あれが三番目だ」と言ったからです。四番目の召使はふたをかぶせた料理を運ばされて、領主は博士に、腕前を見せてもらおう、ふたの下には何があるか当ててください、と言いました。実はカニが入っていたのです。博士はその皿を見て、どう言えばいいのか見当がつきませんでした。それで「ああ、あわれなクラブ(カニ)だ」と叫びました。領主はそれを聞くと、叫びました。「そら、わかってるぞ。誰が金を持ってるかもわかってるにちがいない」

これで召使たちはひどくおろおろして、博士にちょっと外に出てもらいたいと合図を送りました。それで出ていくと、召使たちが四人とも金を盗んだと打ち明け、もし自分たちのことを言わなければ、すすんでお金を返し、おまけにたくさんのお金を博士にさしあげます、というのは博士が言えば自分たちは縛り首になりますから、と言いました。

四人は博士を金を隠したところへ連れていきました。これで博士は納得し、広間へ戻って食卓に座ると、言いました。「領主様、では金貨がどこに隠されているか私の本で探しますので。」ところで五番目の召使は博士がまだもっと知ってるのか聞くためにストーブの中にひそんでいました。博士はじっと座り、ABCの本を開き、あちこちめくり、雄鶏を探しました。すぐに見つけることができなかったので、「お前がそこにいるのは知ってるんだ、だから出てきた方がいいぞ。」と言いました。するとストーブの中にいた召使は自分のことだと思って、びっくりして「この人は何でもわかるんだ」と叫びながら、飛び出てきました。それから、ものしり博士は領主に金のありかを教えましたが、誰が盗んだかは言いませんでした。そうして双方からお礼にたくさんのお金を受け取り、名高い人になりました。


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