シュヴァーベンの七人男







シュヴァーベンの七人男 メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
7.6/10 - 17
シュヴァーベンの七人男
昔、七人のシュヴァーベン人が一緒になりました。最初はシュルツさん、二番目はジャックリ、三番目はマルリ、四番目はジェルグリ、五番目はミケル、六番目はハンス、七番目はバイトリでした。七人はみんな世界を旅してまわり、冒険を求め、偉大なことをなしとげようと決心しました。しかし、安全に武器を手にしていくためにただ一本ですが、とても強力でとても長い槍を作ってもらうのがよかろうと考えました。この槍を七人が一緒に持ちました。先頭は、一番度胸があり勇敢な人、それはシュルツさんでした。他のみんなが一列になって続き、バイトリが一番最後でした。

七月のある日のことでした。七人はもう長いこと歩きましたが、泊ることができる村に着くまではまだ長い道のりがありました。たそがれ時に草原にいたので、大きなカブトムシかスズメバチがやぶのかげから出て七人のそばを飛び、脅すようにブンブン羽音をたてました。シュルツさんはとても驚き、槍を落としそうになって、体じゅうびっしょり冷や汗をかきました。「しっ、耳を澄まして!」とシュルツさんは仲間に叫びました。「わっ、太鼓の音が聞こえるぞ。」シュルツさんの後ろで槍を握っていたジャクリは、鼻が何か匂いをかぎつけ、「確かに何かおこっているぞ。火薬と火縄の匂いがする。」と言いました。

これを聞いてシュルツさんはあわてて逃げ、あっというまに垣根を跳び越えました。しかし、干し草作りのあと置きっ放しにしてあった熊手の歯の上に飛び下りたので、熊手の取っ手が顔にはね返りしたたかにぶんなぐられました。「あいたた、あいたた」とシュルツさんは悲鳴をあげました。「捕虜にしてくれ。降参だ。降参だ」他の六人みんなが次々と跳び越えてきて、「あんたが降参するなら、私も降参するよ。」「あんたが降参するなら、私も降参するよ。」と口々に言いました。やがてとうとう、敵の誰も自分たちを縛って連れて行かないので、勘違いしていたと分かりました。そのことが人に知れて、馬鹿だと笑われないように、誰か一人がうっかりその話をしてしまうまでは黙っていようと誓い合いました。そのあと七人はまた旅を続けました。

七人がきりぬけた二番目の危険は最初のと比べ物になりません。何日かあとのことですが、道をすすんでいくと休閑地を通りました。そこにウサギがひなたで眠っていましたが、耳が真直ぐに立ち、大きなガラスのような目が大きく開いていました。七人はみんな恐ろしい野の獣を見てびっくりし、どうしたら一番危険でないか相談しました。というのは、もし逃げたとして、怪物は追いかけてきてみんなをまるごと食べてしまうと知っていたからです。それで、七人は、「おれたちは大きく危険な戦いをしなくてはならない、思い切ってやれば半分勝ったと同じだ。」と言いました。

七人全員が槍を握りました。シュルツさんが先頭、バイトリがしんがり。シュルツさん①は槍を前にでないようにひたすら踏ん張っていましたが、後ろのバイトリ⑦はまるで勇ましくて前方に突撃したがって、どなりました。「突け!シュヴァーベンの一人一人の名にかけて、突かぬなら、足萎えになれ!」

しかしハンス⑥はこれをギャフンとさせて、言いました。「ひどい悪口だ、べらべら喋るのは簡単だが、竜退治ではお前はいつもしんがりだ。」
ミケル⑤が、「まったくそのもの。毛の一本も違わない。そこにいるのは悪魔そのものだ。」とどなりました。
次はジェルグリ④の番で、「悪魔でなけりゃ、少なくとも悪魔の母親。または悪魔の義兄弟か。」
今度はマルリ③で良い考えがあり、バイトリ⑦に言いました。「進め、バイトリ⑦、進め、前へ行け。おれは代わりに後ろで槍をもつ。」しかし、バイトリは従いませんでした。
それでジャックリ②は言いました。「先頭は何と言ってもシュルツさんだ。シュルツさん以外はだれもその誉にふさわしくない。」
それでシュルツさんは勇気を振り絞って、重々しく言いました。「それじゃ思い切って戦いに臨もう。こうしてわれわれの勇気と力を示そう。」
こうして七人みんなで竜に襲いかかっていきました。シュルツさんは十字を切って、神様のご加護を祈りましたが、何の役にも立たず、敵にだんだん近づいてきて、とても苦しくて「ハァッ、ハァッ、ハァ、ハァ」と大声をあげました。この音でウサギは目を覚まし、とても驚いて、パッと跳んで逃げていきました。シュルツさんはウサギがこうして戦場から逃げて行くのを見て、嬉しくて叫びました。「ほら、バイトリ、ほら、見てみろ、あそこだ、怪物はただのウサギだ。」

しかし、シュヴァーベン同盟軍は更なる冒険を求めて進んでいき、モーゼル川にやってきました。これは苔が多く、静かで深い川で、あまり橋がかかっていないので、人々は船で渡らなくてはならない場所が多いのです。七人のシュヴァーベン人はこのことを知らなかったので川の向こう側で働いている人に声をかけて、どうやって川を渡るか知ってるか、と聞きました。遠く離れているのと、シュヴァーベンの方言とで、その男は七人が何を言っているのかわかりませんでした。それで男は、トレヴス近辺の方言で「ウワット(何)?ウワット(何)?」と聞き返しました。シュルツさんは男が川を渡るのを「ウェィド(歩いて)、ウェィド(歩いて)」と言っているのだと思いました。それで先頭だったので、一番先にモーゼル川に入って行きました。まもなくシュルツさんは泥にはまり打ち寄せる深い波間に沈んでしまいました。しかし、帽子の方は風に吹かれて向こう岸に着き、蛙がそのそばに座って、「ウワット、ウワット、ウワット」と鳴きました。反対岸の六人はそれを聞いて、「ああ、みなさん、シュルツさんがわれわれを呼んでますな。あの人が歩いて渡れるんだから、おれたちもできますよ。」と言いました。それで六人全員が大急ぎで一緒に水にとび込み、溺れて死んでしまいました。こうして一匹の蛙が六人全員の命を奪い、シュヴァーベン同盟軍は誰ひとり故郷に帰りませんでした。


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