桧树


ねずの木の話


大概是在二千年以前吧,有一个富人对自己的妻子非常爱护,夫妻俩相亲相爱,生活非常幸福,遗憾的是他们一直没有小孩。 他们的房屋前有一座花园,里面有一棵高大的桧树。 一年冬天,外面下起了大雪,大地披上了白色的银装,妻子站在桧树下,一边欣赏着雪景,一边削着苹果,一不留神,小刀切到了手指头,滴滴鲜血流出来洒在了雪地上。 看着白雪衬托着的鲜红血点,她深深地叹了一口气说道:"唉--!要是我有一个孩子,他的皮肤像雪一般的白嫩,又透着血一样的红润,我该是多么的幸福啊!"说着想着,她的心情变得兴奋起来,仿佛自己的愿望真的就要成为现实一样。
冬天过去了,春风吹来,卸去了披在大地身上的银装,又给她换上了绿色的外套,朵朵鲜花点缀着翠绿的田野;当树木吐露出春芽时,嫩枝又开始被拂去枝头的残花,小鸟在树丛间欢快地飞来跳去,唱着赞美春天的歌声。 面对这生机盎然的大自然,富人的妻子满怀希望,心中充满了喜悦。 初夏来临,温暖的阳光又催开了桧树的花蕾,和暖的夏风夹带着丝丝甜意的花香飘进了她的房中。 花香使她心情激荡,心跳不已。 她来到桧树下,欣喜地跪在地上,虔诚地默默祈祷着。 秋天快到了,当树枝上挂满累累果实的时候,她从桧树上采下色泽深红的干果。 不知为什么,她此时的心情显得非常悲哀而伤心。 她叫来丈夫对他说:"如果我死了,就把我埋在这桧树下吧。"不久,她生下了一个非常漂亮的儿子,孩子长得正如她所希望的一样,真是白里透红、红中透粉。 看见自己可爱的孩子,她心里充满了快乐,再也支持不住生产的痛苦,慢慢地垂下脑袋,离开了自己的丈夫和刚生下的孩子。
丈夫按照她的愿望把她埋在了桧树下,痛哭着哀悼她的去世。 过了一段时间,他心情平静了一些,眼泪也少多了。 又过了一段时间,他的眼泪完全没有了,再过了一段时间,他娶了另外一个妻子。
时光流逝,第二个妻子生了一个女儿,她非常呵护这个女儿,但前妻生下的儿子长得越来越惹人喜爱,像雪一样的白嫩 ,透着血一般的红润。 她看见这个孩子就充满了仇恨,认为有了他,她和自己的女儿就得不到丈夫的全部财富了。 所以,她对这个可怜的孩子百般苛待,经常虐待他,把他从屋子里的一个角落推搡到另一个角落,一会儿给他一拳头,过一会儿又拧他一下,他身上尽是青红紫绿的瘀伤。 他从学校放学回来,往往一进屋就没有安宁的地方可待,这使他看见继母就害怕。
有一次,小女孩的母亲要到贮藏室去,她赶上妈妈说道:"妈妈,我可以吃一个苹果吗?"妈妈回答说:"好的!我的小乖乖。"说完,她从箱子里拿出一个鲜艳的红苹果给了她。 这个箱子的盖子非常沉重,上面有一把锋利的大铁卡子。 小女孩接过苹果说道:"妈妈,再给我一个,我要拿给小哥哥去吃。"她妈妈听了心里很不高兴,但嘴里却说道:"好吧,我的宝贝!等他放学回来后,我同样会给他一个的。"说着这话,她从窗子里看见小男孩正好回来了,马上从女儿手中夺回苹果,扔进箱子,关上盖子对女儿说:"等哥哥回来以后,再一起吃吧。"
小男孩走进家门,这个阴险的女人用温柔的声音说道:"进来吧,我的乖孩子,我给你一个苹果吃。"小男孩听到这话,说道:"妈妈,你今天真亲切!我的确很想吃苹果。""好的,跟我进来吧!"说罢,她把他带进贮藏室,揭开箱子盖说:"你自己拿一个吧。"当小男孩俯身低头,伸手准备从箱子里拿苹果时,她狠毒地拉下了箱盖,"砰!"的一声,沉重的箱盖猛地砍下了这可怜小男孩的头,头掉落在了箱子里的苹果中。 当她意识到自己所做的事以后,感到非常恐惧,心里算计着怎样才能让自己与这事脱离干系。 她走进自己的卧室,从抽屉里拿出一条手巾,来到贮藏室,将小男孩的头接在他的脖子上,用手巾缠住,又将他抱到门前的一个凳子上坐着,在他手里塞了一个苹果。 一切料理完毕,没有一个人看见她所干的勾当。
不久,小女孩玛杰丽走进厨房,看见妈妈站在火炉旁,搅动着一锅热水,她说道:"妈妈 ,哥哥坐在门边,手里拿着一个苹果,我要他给我,但他一句话也不说,脸色好苍白,我好怕哟。 "妈妈回答道:"混帐! 你再去,如果他不回答你的话,就狠狠地给他一耳光。 "玛杰丽转身来到门口对哥哥说:"哥哥,把苹果给我。 "但哥哥不说一句话,她伸手一耳光打去,哥哥的头一下子就打被落下来。这一下,她连魂都吓跑了,尖叫着跑到她妈妈面前,说自己把哥哥的头打掉了,说着就伤心欲绝地大哭起来。妈妈说道:"玛杰丽! 你做了什么事呀? 唉! 已经做了的事是无法挽回的了,我们最好把他处理掉,不要向任何人提起这事。 "母亲抓起小男孩,把他剁碎,放到锅子里,做了一锅汤。可是玛杰丽只是站在那里哭,眼泪一滴滴地掉进锅里,所以锅里根本就不用放盐了。
当父亲回家吃饭的时候,他问道:"我的小儿子呢?"母亲没有吭声,她端了一大碗黑汤放在桌子上,玛杰丽一直伤心地低着头在痛哭。 父亲又一次问到他的小儿子到哪里去了,母亲说道:"啊!我想他去他叔叔家了。"父亲问道:"有什么事走得这么匆忙,连向我告别都来不及就走了呢?"母亲又回答说:"我知道他很想去,他还求我让他在那里住一段时间哩,他在那里一定会过得很好。"父亲说道:"唉!我可不喜欢他这样做,他应该向我告别再走才对。"他继续吃了起来,但心里却仍然对他的儿子放心不下,总觉得有些伤心,就对小女儿说:"玛杰丽,你哭什么呢?我想你哥哥会回来的。"但玛杰丽很快溜出餐厅,来到自己的房间,打开抽屉,拿出她最好的丝制手绢,把她小哥哥的残骸包起来,提到屋外,放在了桧树下面。 她自始至终都在伤心地流着眼泪,到这时才觉得心里稍微轻松一点,便停止了哭泣。
等她擦干眼泪再看时,她发现桧树竟开始自动地前后摆动起来,一根根树枝伸展开来,然后又相互合在一起,就像是一个人在高兴地拍着手一样。 接着,树中显现出了薄薄的云雾,云雾的中间有一团燃烧着的火焰,一只漂亮的小鸟从火焰中腾起,飞向了天空。 小鸟飞走后,手巾和小男孩不见了,树也恢复了原样。 玛杰丽这时的内心才真正地快乐起来,仿佛她哥哥又活了一样,她高兴地走进屋子吃饭去了。
那只小鸟飞走之后,落在了一个金匠的房顶,开始唱道:
"我的母亲杀了她的小儿郎,
我的父亲把我吞进了肚肠,
美丽的玛杰丽小姑娘,
同情我惨遭魔掌,
把我安放在桧树身旁。
现在我快乐地到处飞翔,
飞过群山峡谷、飞过海洋,
我是一只小鸟,我多么漂亮! "
金匠坐在自己的店铺里正好做完一根金链条,当他听到屋顶上鸟儿的歌声时,站起来就往外跑,匆忙之中,滑落了一只鞋也顾不上去穿。 金匠冲到街上,腰间还系着工作围裙,一只手拿着铁钳,一只手拿着金链条。 他抬头一看,发现一只小鸟正栖息在屋顶上,太阳在小鸟光洁的羽毛上闪闪发亮。 他说道:"我漂亮的小鸟,你唱得多么甜美啊!请你再把这首歌唱一遍。"小鸟说道:"不行,没有报酬我不会再唱第二遍,如果你把金链条给我,我就再唱给你听。"金匠想了一下,举起金链条说:"在这儿,你只要再唱一遍,就拿去吧。"小鸟飞下来,用右爪抓住金链条,停在金匠近前唱道:
"我的母亲杀了她的小儿郎,
我的父亲以为我去向远方,
美丽的玛杰丽小姑娘,
同情我惨遭魔掌,
把我安放在桧树身旁。
现在我快乐地到处飞翔,
飞过群山峡谷、飞过海洋,
我是一只小鸟,我多么漂亮! "
唱完之后,小鸟飞落在一个鞋匠的屋顶上面,和前面一样唱了起来。
鞋匠听到歌声,连外衣都没穿就跑出屋门,抬头朝房顶望去,但刺眼的阳光照着他,使他不得不抬起手挡在眼睛前。 看出是只小鸟后,他说道:"小鸟,你唱得多么悦耳啊!"又对房子里喊道:"夫人!夫人!快出来,快来看我们的屋顶上落了一只漂亮的小鸟,它在唱歌呢!"然后,又叫来他的孩子们和伙计们。 他们都跑了出来,站在外面惊讶地看着这只小鸟,看着它红绿相衬的漂亮羽毛,看着它脖子上闪耀着金色光彩的羽环,看着它象星星一样亮晶晶的眼睛。 鞋匠说道:"喂,小鸟,请你再把那首歌唱一遍吧。"小鸟回答说:"不行,没有报酬我不会再唱第二遍。如果要我唱,你得给我一点东西。"鞋匠对他的妻子说道:"夫人,你快到楼上的作坊去找一双最好的,红色的新鞋子拿来给我。"妻子跑去把鞋子拿来了,鞋匠拿着鞋子说:"我漂亮的小鸟,拿去吧,但请你把那首歌再唱一遍。"小鸟飞下来用左爪抓住鞋子后,又飞上屋顶唱道:
"我的母亲杀了她的小儿郎,
我的父亲以为我去向远方,
美丽的玛杰丽小姑娘,
同情我惨遭魔掌,
把我安放在桧树身旁。
现在我快乐地到处飞翔,
飞过群山峡谷、飞过海洋,
我是一只小鸟,我多么漂亮! "
它唱完之后,一只爪子抓着鞋子,另一只爪子抓着金链条飞走了。 它飞了很远很远才来到一座磨坊,磨子正在"轰隆隆!轰咚咚!轰隆隆!轰咚咚!"地转动着。 磨坊里有二十个伙计正在劈着一块磨石,伙计们用力地"咔嚓!噼啪!咔嚓!噼啪!"地劈着,磨子的轰隆隆、轰咚咚与伙计们劈磨石的咔嚓、噼啪声交织在一起,难听极了。
小鸟栖息在磨坊边的一棵椴树上,开始唱道:
"我的母亲杀了她的小儿郎,
我的父亲以为我去向远方,"
两个磨坊伙计停下手中的活听了起来。
"美丽的玛杰丽小姑娘,
同情我惨遭魔掌,
把我安放在桧树身旁。 "
除了一个伙计之外,其他伙计都停止了手中的活,向树上望去。
"现在我快乐地到处飞翔,
飞过群山峡谷、飞过海洋,
我是一只小鸟,我多么漂亮! "
歌一唱完,最后一名伙计也听到了,他站起来说道:"啊!小鸟,你唱得多动听呀,请你再唱一次,让我把整首歌听一遍!"小鸟说:"不行,没有报酬我不会唱第二遍,把那块磨石给我,我就再唱一遍。"那人回答说:"哎呀!那块磨石不是我的,如果是我的,你拿去我求之不得哩。"其余的伙计都说:"来吧,只要你把那歌再唱一遍,我们都同意给你。"小鸟从树上飞下来,二十个伙计拿着一根长杠子,用尽力气"嗨哟!嗨哟!嗨哟!"终于将磨石的一边抬了起来,小鸟把头穿进磨石中间的孔内,在众伙计目瞪口呆的注视下,背着二十个人都没能抬起的磨石,飞上了椴树,他们惊奇得不得了,而小鸟就像没事一般,把那首歌又唱了一遍。
小鸟唱完歌,张开翅膀,一只爪抓着链子,另一只爪子抓着鞋子,脖子上套着磨石,飞回到他父亲的房子上。
现在,他的父亲、母亲和玛杰丽正坐在一起准备吃饭。 父亲说:"我感觉现在是多么的轻松,多么的愉快啊!"但他的母亲却说:"唉!我心情好沉重,真是糟透了。我觉得就像有暴风雨要来似的。"玛杰丽没有说话,她坐下便哭了起来。 正在这个时候,小鸟飞来落在了房屋的顶上。 父亲说道:"上帝保佑!我真快乐,总觉得又要看到一个老朋友一样。"母亲说道:"哎哟!我好痛苦,我的牙齿在不停地打战,浑身的血管里的血就像在燃烧一样!"说着,她撕开了身上的长外套想让自己镇静下来。 玛杰丽独自坐在一个角落里,她前面的裙摆上放着一只盒子,她哭得非常厉害,眼泪唰唰地淌个不停,把盒子都流满了。
小鸟接着飞到桧树顶上开始唱道:
"我的母亲杀了她的小儿郎,--"
母亲马上用手捂住耳朵,把眼睛闭得紧紧的,她认为这样一来既不会看见,也不会听到了。 但歌声就像可怕的暴风雨一样灌进了她的耳朵,她的眼睛像闪电一样在燃烧,在闪光。 父亲吃惊地叫道:"哎呀!夫人。"
"我的父亲以为我去向远方,--"
"那是一只多么漂亮的小鸟啊,他唱得多么美妙动听啊!
看那羽毛在阳光下就像许多闪烁的宝石一样。 "
"美丽的玛杰丽小姑娘,
同情我惨遭魔掌,
把我放在桧树身旁。 --"
玛杰丽抬起头,悲伤地哭泣着。 父亲说:"我要出去,要走近前去看看这只小鸟。"母亲说:"啊!别留下我一个人在这里,我感觉这房子就像在燃烧一样。"但父亲还是走出去看那只鸟去了,小鸟继续唱道:
"现在我快乐地到处飞翔,
飞过群山峡谷、飞过海洋,
我是一只小鸟,我多么漂亮! "
小鸟刚一唱完,他就把金链条扔下去,套在了父亲的脖子上。 父亲戴着非常适合,他走回房子里说道:"你们看,小鸟给了我一条多么漂亮的金项链,看起来多气派呀!"但他妻子非常害怕,吓得瘫在了地板上,帽子也掉了下来,就像死了一样。
这时,小鸟又开始唱了起来,玛杰丽说:"我也要出去,看看小鸟是否会给我东西。"她刚一出门,小鸟就把红鞋子扔到她的面前。 她把鞋捡起来穿上,觉得自己一下子轻松快乐起来了。 跳着跑进屋子里说道:"我出去时心情压抑,悲痛,现在我真快乐!你们看小鸟给我的鞋子多么漂亮呀!"母亲说道:"哎呀!像是世界的末日来到了一样!我也得出去试一试,说不定我会觉得好一些的。"她刚一出去,小鸟把磨石扔到了她的头上,将她砸得粉碎。
父亲和玛杰丽听到声音,急忙跑了出来,母亲和小鸟都不见了,他们只看见烟雾和火焰在那里升腾燃烧。 当烟火散尽消失后,小男孩站在了他们身边,他伸手牵着父亲和玛杰丽的手,走进屋子里,快快乐乐地和他们一起吃起饭来。
今はもうずいぶん昔、二千年は前ですが、金持ちの男がいました。妻は美しく信心深い人で、二人は心から愛し合っていました。しかし、二人には、とても欲しいと望んだけれども、子供ができませんでした。妻は昼も夜も子供をお授けくださいとお祈りしましたがそれでもだめでした。二人の家の前に中庭があり、そこには一本のビャクシンの木がありました。冬のある日、妻はその木の下に立ち、リンゴの皮をむいていましたが、そうしているうちに指を切り、血が雪に落ちました。「ああ」と妻は言い、すぐため息をついて、目の前の血を見て、とても惨めに思いました。「ああ、血のように赤く、雪のように白い子供がいたらいいのに」こうして話している間にとてもしあわせな気分になり、本当に子供が生まれるような気がし、それから家に入りました。
一か月経つと雪が消え、二か月すると一面緑になり、三か月経つと花が咲き、四か月すると森の木々の緑が濃くなり緑の枝が密にからみあい、鳥たちがさえずりその声が森にこだまし、花が木から落ちました。五カ月経って、妻はビャクシンの木の下に立ちました。その木はとても甘い香りがして妻の心が躍りました。妻は膝まづき、喜びに我を忘れました。六ヶ月目が終わるころ、実が大きくりっぱになってその時は妻はとても静かになりました。7ヶ月目にビャクシンの実をとってがつがつ食べましたが、その後、病気になり悲しそうでした。8ヶ月目が過ぎて、妻は夫を呼ぶと、「私が死んだら、ビャクシンの木の下に埋めてください。」と言いました。それから次の月が終わるころまで妻はとても安心して嬉しそうでした。それから雪のように白く、血のように赤い子供を生みました。その子を見た時妻はとても喜んだので死んでしまいました。
それで夫は妻をビャクシンの木の下に埋め、悲しんで泣き始めました。しばらく経つと、もっと楽になり、やはり泣きましたががまんできるようになりました。それからまたしばらくして、夫はまた妻をもらいました。
二番目の妻との間に娘が生まれましたが、最初の妻の子供は息子で、血のように赤く、雪のように白い子供でした。妻は自分の娘を見るとかわいくてしかたがありませんでしたが、男の子を見ると、心臓が切り裂かれるようでした。というのは、この子がいつも邪魔になるという思いがしたからでした。妻はどうしたら全財産を娘にやれるかといつも考えていました。また悪魔が妻の心をこういう思いでいっぱいにしたので、男の子を怒り、あっちのすみからこっちのすみへ押しのけ、あっちこっちひっぱたきました。それでとうとう可哀そうな子供はいつもおびえていました。というのは学校から帰ってくると、どこにも落ち着く場所がなかったからです。
ある日、妻は二階の自分の部屋にいると、娘もあがってきて、「おかあさん、りんごをちょうだい」といいました。「いいよ」と妻は言って、箱から立派なりんごを一つ渡しました。しかしその箱には大きな鋭い鉄の錠がついたとても重いふたがついていました。「おかあさん、おにいちゃんにも一つもらえない?」と娘がいいました。これを聞くと妻は怒りましたが、「いいよ、学校から帰ってきたらね。」と言いました。それで窓から子供が帰ってくるのが見えた時、悪魔が妻に入りこんだようで、りんごをひったくって娘からまたとりあげ、「お兄ちゃんより先にはりんごをもらえないよ。」と言いました。
それから妻はりんごを箱に投げ入れ、閉めました。それから男の子が戸口から入って来ると、悪魔にふきこまれて妻はやさしく男の子に言いました。「ねぇお前、りんごを食べるかい?」そして意地悪く男の子を見ました。「おかあさん」と小さな男の子は言いました。「なんて怖い顔。うん、りんごをちょうだい。」すると妻は男の子に言わなくてはいけないように思われました。「一緒においで。」妻は箱のふたを開け、「自分でりんごをとりなさい。」と言いました。小さい男の子が箱の中にかがみこんでいる間に悪魔が妻をそそのかしました。バタン。妻はふたを閉めました。子供の頭がポーンと飛び、赤いリンゴの間に落ちました。すると妻はとても恐ろしくなり、「私のしわざだと思わせないようにしなくちゃ」と考えました。それで二階の自分の部屋に行き、箪笥の一番上の引出しから白いハンカチをとり、首に頭をのせ、何も見えないようにハンカチを巻きました。それから男の子を戸の前の椅子に座らせ、手にりんごを持たせました。
このあと、マルリンヒェンが台所の母親のところにきました。母親は自分の前のお湯を入れた鍋をずっとかきまわし火のそばに立っていました。「お母さん」とマルリンヒェンは言いました。「お兄ちゃんが戸口のところに座っていて、真っ青な顔で手にりんごを持ってるの。りんごをちょうだいと頼んでも返事をしなかったわ。とても怖かったわ。」「お兄ちゃんのところにお戻り。」と母親は言いました。「それで返事をしないんなら、横っ面をなぐってやりなさい。」それでマルリンヒェンは兄のところに行き、「お兄ちゃん、りんごをちょうだい」と言いました。しかし兄は何も言わないので、マルリンヒェンは横っ面をはたきました。すると兄の頭がとれて落ちました。マルリンヒェンはおびえて、泣きだしわあわあ泣きました。母親のところへ走っていき、「ああん、お母さん、わたし、お兄ちゃんの頭をたたき落しちゃた~」と言い、泣いて泣いて、泣き止みませんでした。「マルリンヒェン」と母親は言いました。「なんてことをしたの。だけど、泣くのはおやめ。誰にも知らせないんだよ。もうしかたがないよ。あの子を黒ソーセージにしよう。」それから母親は小さな男の子を持って来て、細かく切り、鍋に入れて黒ソーセージを作りました。しかし、マルリンヒェンはそばに立ってひたすら泣いていて、その涙がみんな鍋に入り、塩が必要ありませんでした。
そのあと、父親が帰ってきて、食卓につき、「だけど息子はどこだ?」と言いました。母親は大きな皿の黒ソーセージを食卓にだし、マルリンヒェンは泣いて泣き止むことができませんでした。それで父親はまた「だけど息子はどこなんだ?」と言いました。「ああ、それね」と母親は言いました。「向こうの、母親の大叔父さんのところにいったわよ。しばらくそこにいるって。」「そこで何をするつもりなんだ?おれに行ってきますとも言わなかったぞ。」
「あら、あの子は行きたかったのよ。私に6週間泊ってもいいかと聞いてたわ。あっちでよく世話してくれるわよ。」「ああ」と父親は言いました。「何か変な気がして、いい気分じゃないな。あの子はおれに当然行ってきますと言う筈なんだがな。」そう言って、父親は食べ出し、「マルリンヒェン、どうして泣いてるんだ?兄ちゃんはきっと帰ってくるさ。」と言いました。それから「なあ、お前、こいつはうまいな。もっとくれよ。」と言いました。それで食べれば食べるほど、もっと欲しくなり、「もっとくれよ。お前たちは食べるな。なんだか全部おれのもののような気がするんだ。」と言いました。そして、食べに食べて、骨を全部テーブルの下に投げ、とうとう全部食べてしまいました。
しかし、マルリンヒェンは自分の箪笥へ行って一番下の引出しから一番いい絹のハンカチをとってきて、テーブルの下から、骨を全部拾い集め、絹のハンカチに入れて、血が出るほど泣きながら戸口の外へ持って行きました。それからビャクシンの木の下の緑の草の上に骨を置きました。そこに骨を置いてしまったら、急に心が軽くなり、もう泣きませんでした。するとビャクシンの木が動き出し、まるで誰かが喜んで手をたたくように、枝が分かれ、また閉じました。同時に木から霧が上っているように見え、この霧の真ん中が火のように燃え、その火から素晴らしい声で鳴きながら美しい鳥が飛び立ちました。その鳥は空高く飛んで行き、行ってしまうとビャクシンの木は前と全く同じになり、骨の入ったハンカチはもうそこにありませんでした。しかし、マルリンヒェンは兄がまだ生きているかのように明るくうれしくなりました。そして楽しそうに家に入り、食卓に座って食べました。
しかし鳥は飛んでいって、金細工師の家にとまり、鳴きだしました。「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
金細工師は、金の鎖を作りながら作業場にいました。自分の家の屋根にとまってさえずっている鳥をきいたとき、その歌がとても美しく思われました。立ちあがりましたが、敷居をまたいだとき上履きが片方ぬげました。しかし片方の靴と片方の靴下のまま道の真ん中まででていきました。エプロンをつけたまま、片手に金の鎖を握りもう一方の手には鋏を持っていました。太陽がとても明るく通りに照っていました。それでまっすぐ進んで行って立ち止まり、鳥に言いました。「鳥よ」それから「なんてきれいな歌だ。もう一回歌ってくれないか。」と言いました。「だめだよ。」と鳥は言いました。「ただでは2回歌わないよ。金の鎖をおくれ。そうしたらもう一回歌ってあげる。」「ほら」と金細工師は言いました。「金の鎖をあげるよ。さあ、あの歌を歌ってくれ。」それで鳥はやってきて、右の爪で鎖をとり、金細工師の前に行ってとまり歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
それから鳥は靴屋に飛んで行き、その家の屋根にとまり歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
靴屋はそれを聞き、シャツを着たまま戸口の外へ走り出て、屋根を見上げ、太陽がまぶしいので目の上に手をかざさなければなりませんでした。「鳥よ」と靴屋は言いました。「なんてきれいな歌だ。」それから入り口から中へ叫びました。「お前、外へ出て来いよ。鳥がいるんだ。あの鳥を見てみろ。歌がうまいんだ。」それから娘や子供たち、職人、女中や下男、みんなが通りに来て、鳥を見て、その鳥が、なんと美しいか、なんと素晴らしい赤と緑の羽をしているか、首が本当の金のようで目が星のようにかがやいている、とわかりました。「鳥よ」と靴屋は言いました。「さあ、もう一回歌っておくれ」「いやだ」と鳥は言いました。「ただで2回うたわないよ。なにかくれなければいけないよ。」「お前」と靴屋はかみさんに言いました。「屋根裏部屋に行って、一番上の棚に赤い靴があるから、もってこいよ。」それでおかみさんが行って靴を持ってきました。「ほら、やるよ」と靴屋は言いました。「さあ、もう一回歌ってくれ。」それで鳥はやってきて、靴を左の爪でとり、屋根に飛んで戻り歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
歌い終わると鳥はとんでいきました。右の爪には鎖を持ち、左の爪には靴をもって、遠くの水車小屋まで飛んで行きました。水車がガッタン、ゴットン、ガッタン、ゴットンと回り、水車小屋の中に石をきりながら、粉屋の男たちが20人いました。石切りの音がヒク、ハク、ヒク、ハク、水車がガッタン、ゴットン、ガッタン、ゴットン。それから鳥は水車小屋の前にある菩提樹に行ってとまり、歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した」すると一人の男が仕事をやめました。「僕の父さん、僕を食べた」するともう二人が仕事をやめ、その歌に耳を傾けました。「僕の妹、マルリンヒェン」するともう四人がやめました。「僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み」もう8人しか切っていなくなりました。「ビャクシンの木の下に」もうたった5人だけになりました。「置いた」もう一人だけになりました。「キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
それで最後の男も仕事をやめて、最後の言葉を聞きました。「鳥よ」と男は言いました。「何てきれいな歌だ。おれにも聞かせてくれ。もう一度おれに歌ってくれ。」「だめだよ」と鳥は言いました。「ただでは2回歌わないよ。その石うすをおくれ。そうしたらもう一回歌ってあげる。」「いいよ」と男は言いました。「おれだけのものなら、あげるんだがね」「いいよ」と他の男たちがいいました。「もう一回歌うなら、やれよ。」それで鳥は降りてきて、20人の男たちみんなが角材を使って石を立ち上げ、鳥は穴に首を入れて、服のえりのように石をのせて、また木に飛んで行って歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
歌い終わると、鳥は翼を広げ、右の爪には鎖を持ち、左の爪には靴をもち、首のまわりに石うすをかけて、はるか遠く父親の家へ飛んで行きました。
部屋では、父親と母親とマルリンヒェンが食卓についていました。父親が、「なんて気が軽くて、楽しい気分なんだ。」と言いました。「いいえ」と母親は言いました。「とても不安な気分だわ。まるで嵐がくるみたい。」しかし、マルリンヒェンはただ泣いてばかりいました。そのとき鳥が飛んできました。屋根にとまったので父親が「ああ、本当に嬉しい気持ちだ。外では太陽がとても美しく照っているし、昔の友達にまた会うような気分だ。」と言いました。「いいえ」と母親は言いました。「私はとても心配。歯がガチガチするし、血管の中で火が燃えてるみたい。」母親は胴着をばっと広げました。しかしマルリンヒェンは泣きながらすみに座り、目の前に皿を置き、あまり泣いてその皿がすっかりぬれてしまいました。
それから鳥はビャクシンの木にとまり歌いました。「ぼくのかあさん、僕を殺した」すると母親は耳をふさぎ、目を閉じて見ようとも聞こうともしませんでしたが、暴風雨のように耳の中でごうごうとなり、目は燃えて稲妻のように光りました。「僕の父さん、僕を食べた」「なあ、母さん、あれはきれいな鳥だ。とても素晴らしく歌うよ。太陽がとても暖かく照って、シナモンのようなにおいがするよ。」と父親は言いました。「僕の妹、マルリンヒェン」するとマルリンヒェンは頭を膝にのせ泣き続けました。しかし父親は「外にでよう。もっと近くであの鳥を見なくては」と言いました。「ああ、行かないで。私は家が揺れて火事みたいに感じる。」と母親は言いました。しかし、父親は外に出て鳥を見ました。「僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
こう歌って鳥は金の鎖を落とし、それはちょうど父親の首のまわりに落ち、全くちょうど首のまわりにきたので、よく似合いました。それで父親は中に入り、「どんなに素敵な鳥かちょっと見てごらん。それになんときれいな金の鎖をくれたんだ。とてもきれいな鳥だよ。」
しかし母親はこわがって、部屋の床に倒れ、帽子が頭から落ちました。すると鳥はもう一度歌いました。「ぼくのかあさん、僕を殺した」「それを聞かなくてすむように地中1000フィート下に行きたい」「僕の父さん、僕を食べた」すると母親は死んだようにまた倒れました。「僕の妹、マルリンヒェン」「ああ」とマルリンヒェンは言いました。「私も出て行って、鳥が何かくれるか見てみよう」そして出て行きました。「僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み」、そのとき鳥は妹に靴を落としました。すると、マルリンヒェンは気分が軽くなり嬉しくなりました。新しい赤い靴をはき、踊ったり跳ねたりして家に入りました。
「あら」と妹は言いました。「外へ出るときはあんなに悲しかったのに、今はとても気が軽いわ。あれは素晴らしい鳥だわ。私に赤い靴をくれたの。」「えっ」と母親は言って立ち上がり、髪の毛が炎のように逆立っていました。「まるで世界が終わりになるように感じるわ。私も外に出て気分が軽くなるか見てみよう。」
それで戸口から出ると、ドスン、鳥が母親の頭に石うすを投げ落としました。それで母親はぺちゃんこにつぶれてしまいました。父親とマルリンヒェンがその音を聞いて、外へでてみました。その場所から、煙と炎と火があがっていました。それがおわると、そこに兄が立っていて、父親とマルリンヒェンの手をとりました。三人はみんな嬉しくて、家に入り食卓について食べました。