壮士汉斯


強力ハンス


从前有一对夫妇,他们只有一个独生儿子,这家子单独住在一个偏僻的山谷里。 一次女人带着年仅两岁的汉斯,到林间去拾冷杉枝。 因为此时正是春暖花开的时候,他们看见五颜六色的花正高兴,突然丛林中跳出了两个强盗,掳走了母亲和孩子,带着他们朝着森林的黑暗深处走去,那儿多年没人进去了。 那可怜的女人苦苦哀求强盗放走她们母子俩,可强盗们是铁石心肠,根本不听她的哀求,只管用力地赶着他们往前走。 大约两小时后,他们来到了一座有门的岩壁前,强盗们敲了敲门,门就开了。 他们走过一条长长的暗道,最后来到一个大洞里,那洞被炉火照得如同白昼。 只见四周的墙壁上挂着刀剑和别的凶器,在炉光的照射下闪着寒光。 中间摆着黑桌子,桌旁另有四个强盗坐在那儿赌博,上首那人就是他们的头儿。 他看见女人走来,便走过来和她搭话,叫她别害怕,说只管放心,他们不会伤害她,但她必须管理家务,如果她把一切都弄得有条有理,他们是不会亏待她的。 随后他给她吃一些东西,又指给她看她和孩子的床。
女人在强盗窝里一过就是许多年,汉斯现在已渐渐长大强壮了。 母亲给他讲故事,叫他念一本在洞里找到的破旧骑士书。 汉斯九岁时,他用松木枝做了根结实的棍子,把它藏在床后,然后去问母亲:"娘,现在请你告诉我,谁是我的爹,我很想知道。!"母亲默不作声,不肯向他说什么,免得他患相思病,她知道那些无法无天的强盗是决不会放走汉斯的,但想到汉斯不能回到他爹身边去,她的心都快碎了。 晚上,强盗们抢劫回来时,汉斯就拿出他的棍子,走到强盗头儿跟前说:"现在我要知道谁是我的爹,如果不立刻告诉我,我就要把你打死。"强盗头儿一听哈哈大笑,给了汉斯一个耳光,打得他滚到了桌子底下。 汉斯爬了起来,没有说话,心想:"我要再等一年,到时我要再试试,或许会好些。"一年又过去了,他又拿出了那根棍子,抹掉上面的灰尘,仔细瞧了瞧,说:"这是根挺结实有力的棍子。"晚上,强盗们回来了,一坛接一坛地喝酒,然后一个个都醉得低下了头。 这时汉斯拿出了棍子,走到强盗头子的跟前,问他爹是谁。 强盗头儿只给他一个耳光,又打得他滚下了桌子。 但没过久,他又爬了起来,抡起棍子就给头儿和其他的强盗一顿痛打,打得他们手脚不能动弹。 母亲站在角落里,看到他是这样的勇猛强壮,满脸惊讶。 汉斯打完强盗,就走到母亲跟前,说:"现在我该办正事了,但我现在想知道,谁是我的爹。""亲爱的汉斯,来,我们这就去找,一定要把他找到。"她取下了头儿开门的钥匙,汉斯又去找了一个大面粉袋,装了满满一袋金银财宝,扛在肩上,他们便离开了山洞。 汉斯从黑暗的洞中走到太阳里,展现在他眼前的是那绿色的森林、无数的鲜花和小鸟,还有天上的朝阳,他站在那儿,眼睛睁得大大的,仿佛眼前的一切是在梦中。
母亲带着他寻找回家的路,几小时后,他们终于平平安安地来到了一片寂寞的山谷中,他们的小屋就在眼前。 父亲正坐在门前,当他认出了自己的妻子,并听说汉斯就是自己的儿子时,欢喜得哭了起来,他以为他们母子早死了。 汉斯虽说只有十二岁,却比父亲高一个头。 他们一齐回到屋里,汉斯刚把口袋放在炉边的长凳上,屋子就吱嘎摇晃起来了,凳也断裂了。 父亲叫道:"天啊!这是怎么回事,现在你把我的屋子给打破了。""别担心,爹,"汉斯说,"这袋子里装的东西,比造一座新屋子需要的钱还多呢!"父子俩立刻动手建新房,还买来了牲口和土地,开始经营农庄。 汉斯犁地,他走在犁头后面,把犁深深地按在了土里,前面的牛儿几乎都不必拉了。
第二年春天,汉斯对父亲说:"爹,这些钱你留着。请给我做根百斤重的旅行杖,我要出远门了。"手杖做好后,汉斯便离开了家 ,他走呀走,来到了一座深深的黑森林。 他在那里听到有什么东西在喀嚓作响,便向周围看,看见一棵松树,从下到上像一根绳子一样拧在一起。 他再抬头往上瞧,看见一个大汉正抓住树干,把它扭来扭去,好像那根本不是棵大树,而是根柳条。 "喂!你在上面干什么?"那汉子说:"我昨天打了捆柴,想搓根绳子去捆柴。"汉斯心想:"他力气倒挺大的。"于是他对汉子喊道:"别干这个了,跟我走吧。"那汉子从树上爬了下来,个儿比汉斯还高出整整一个头。 "你就叫'扭树者'好了。"汉斯对他说。 他们继续往前走,听见什么东西在敲打,每打一下,大地都要抖几抖。 不久,他们来到一坐岩壁前,只见一个巨人站在那里,正用拳头把崖石大块大块地打下来。 汉斯问他做什么,巨人回答说:"我晚上睡觉时,熊、狼和其它的猛兽老在我身边嗅来嗅去,叫我不能入睡,所以我想建造间房子,晚上睡在里面,这样才能安宁些。"汉斯心想:"唉,是的,这人你也用得着。"于是他说:"别造啦,和我们一道走吧。你就叫'劈石人'好了。"巨人答应了,便和他们一起走过森林,凡是他们走到的地方,野兽全被吓住,然后从他们身边跑开了。 晚上,他们来到一座古老的无人居住的宫殿前,走进去睡在了大厅里。 第二天早上,汉斯走进宫前的花园里,发现那儿全荒芜了,长满了荆棘丛。 他正走来走去时,一头野猪猛地朝他冲来,他用手杖只打了它一下,它就马上倒下了。 于是他把野猪扛在肩上,带了上去,大伙儿把野猪叉在铁杆上烤着吃,吃得高兴极了。 他们每天轮留去打猎,留一人看家做饭,每人每天可以吃九磅肉。 第一天扭树者留在家中,汉斯和劈石人去打猎,当扭树者忙着做饭时,一个满脸皱纹的小老头走进宫殿,向他要肉吃。 "可恶的家伙,走开,你还想吃什么肉!"他回答说。 但使他惊讶的是,那很不起眼的小人儿,跳到了扭树者的身上,用拳头乱打他,他竟不能抵抗,最后倒在上直喘气。 小老头直到完全解了恨,方才离去。 另外两个人打猎回来,扭树者只字不提那个老头和挨打的事。 他心想:"等他俩呆在家里的时候,也尝尝那个好斗的小老头的厉害吧。"仅仅是这想法已经够他乐一阵子的了。
第二天劈石人留在家里,他的遭遇跟扭树者一模一样,因为他不肯拿肉给他吃,结果也被小老头好好地揍了一顿。 当他们回来时,扭树者当然知道他出了事,但他俩都不做声,心想:"让汉斯也尝尝这滋味吧。"
第三天,轮到汉斯留在家中做饭,他正在厨房里认真干活,站在上面打锅里的泡沫,小人儿来了,毫不客气地要肉吃。 汉斯想:"这是个可怜的小老头,我愿意从我的那份中分些给他,这样也不叫别人吃亏。"于是他递给了他一块肉。 那矮子吃完后,又要了一块,好心的汉斯又给了他,并告诉他这块肉很好,他该满意了。 没想到小矮子又第三次开口要,"你脸皮真厚。"汉斯说,就不再给他肉了。 那恶矮子就要跳到汉斯的身上,像对待扭树者和劈石人一样待他,但是他找错人了。 汉斯毫不费力地给了他几个耳光,打得他滚下了台级,汉斯去追他,因为人高腿长的缘故,反而让他给拌倒了,当他爬起来时,矮子在他的前面直乐。 汉斯一直追到森林里,看到他溜进了一个洞里。 汉斯只好回家了,不过记住了那个地方。 那两人回来时,看见汉斯安然无恙,都很惊讶,汉斯把发生的一切告诉了他们,于是他们不再隐瞒他们的遭遇。 汉斯笑道:"都怪你们,谁叫你们要如此吝啬你们的肉,你们这么大的个儿,却被小人儿打了一顿,可真是丢人。"于是他们三人带上箩筐和绳子,朝小矮子溜进去的地洞走去。 他们让汉斯坐在箩筐里,随身带着棍子,然后把他放进洞口。 汉斯下到底后,寻着了一道门,他打开了门,发现那里坐着位美丽如画的少女,简直美得无法形容。 少女旁边坐着那个小矮子,正冷冷地瞪着汉斯,那样子就像一只野猫。 少女被锁链拴着,可怜巴巴地望着汉斯,这引起了汉斯的巨大同情心。 汉斯想:"我得把她从这恶矮子手上救出来。"于是他用棍子打了他一下,他就倒在地上死了。 少女身上的锁链也立刻松脱了,她告诉汉斯,她本是位公主,被一个野蛮的公爵掠了来,关在这里。 因为她不答应嫁给他,公爵让矮子作看守人看着她,她可受够了他的折磨。 随后汉斯把少女放进箩筐,让那两个把他拉了上去。 箩筐又放了下来,但汉斯已不相信那两位同伴了,心想:"他们已经表现得不老实了,没有把小矮子的事情告诉我,谁知他们安什么心?"于是他只把自己的棍子放进去。 幸亏如此,因为箩筐才吊到了半空中,他们又把它松下来了,如果汉斯真的坐在了里面,就会摔个必死无疑了。 汉斯被困在洞中,不知怎样才能从那里爬出去,他想来想去,还是想不出个好办法。 他于是就走来走去,不知不觉间来到了少女曾经呆过的小屋,发现那小矮人的指头上套着枚戒指,闪闪发光,于是他便褪了下来,戴在自己的手上,他然后把戒指转动了一下,突然听到有什么东西在头顶作响,他抬头一看,原来空中有几位神仙在翱翔,他们说,他是他们的主子,问他要干什么? 汉斯起先还不作声,但很快便吩咐他们把自己抬上去。 他们照办了,他觉得自己仿佛飞了起来。 但等他到了上面时,已不见他们的影儿了。 他又走到宫殿里,也找不着个人,扭树者和劈石人都跑了,还带走了那位美丽的公主。 汉斯于是又转动戒指,神仙又来了,说那两个人在海上。 汉斯便不停地跑,一直追到了海边。 他在那里朝远望去,发现离岸边很远的海面上有条小船,他的不忠实的伙伴正坐在里面。 汉斯气极了,不加思索地带着他的棍子,跳下水中,向前方游去。 哪知棍子实在太重,拖着他直往下沉,几乎把他淹死了。 于是他赶紧转动戒指,眨眼间神仙又来了,带着他像闪电般地靠近了小船。 汉斯挥动棍子,把他们俩都打落在水里,给了那两个家伙应有的惩罚。 美丽的公主刚才给吓怕了,汉斯再一次救了她,摇着橹把她送回了她父母家,后来和她结了婚,一切皆大欢喜。
昔、子どもが一人しかいない夫婦がいて、人里離れた谷に全く家族だけで住んでいました。あるとき、母親はもみの木の枝を集めに森に入り、二歳になったばかりの小さいハンスを一緒に連れて行きました。春の季節で子どもが色とりどりの花を楽しんでいるので、母親は子どもと一緒に森の奥へと進んでいきました。突然、二人の強盗が茂みから飛びだして、母親と子どもをつかみ、暗い森の奥深くへ連れていきました。そこは今まで何年も誰も来ないところでした。
可哀そうに、母親は、自分と子どもを放してくれるようにとしきりに頼みましたが、心が石でできた強盗たちは母親の頼みに耳を貸そうとはしないで、力づくでさらに遠くへ追いたてました。二マイルほどやぶやいばらをかき分けて進んだ後、戸がついている岩のところにやってきました。強盗たちが戸をたたくと戸はすぐに開きました。長く暗い通路を通って、やがて大きなほら穴にたどりつきました。そこは炉に燃える火で明るくなっていました。壁には刀やサーベルや他の殺しの武器がかかっていて、明かりを反射して光っていました。真ん中に黒いテーブルがあり、そこで他の強盗が四人賭けごとをして座っており、その先に親分が座っていました。親分は母親を見るとすぐやってきて、話しかけ、安心しろ、こわがらなくていい、何もしやしないから、ただ家のことをやってくれればいいんだ、何でもきちんとしてくれれば悪いようにはしないよ、と言いました。そうして母親に食べ物を与え、子どもと一緒に眠るベッドを教えました。
母親は何年も強盗たちのところにいて、ハンスは背が伸び強くなりました。母親はハンスにお話をしてあげたり、ほら穴でみつけた騎士物語の古い本の読み方を教えました。ハンスが九歳になるともみの木の枝で頑丈なこん棒を作り、ベッドの下に隠しました。それから、母親のところへ行き、「お母さん、僕の父親は誰か教えてください。どうしても知りたいんです。」と言いました。母親は、口を言わず、教えようとしませんでした。ハンスが家を恋しがらないようにと思ったのです。それに、ばちあたりな強盗たちがハンスを行かせないと知っていました。しかし、ハンスが父親のところへ行けないことを思って胸が張り裂けそうでした。
夜に、強盗たちが泥棒の仕事を終えて帰ってくると、ハンスはこん棒を持ちだして、親分の前に立ち、「僕の父親が誰か今知りたい、すぐに教えないとぶちのめすぞ。」と言いました。すると親分は笑って、ハンスの横っ面をひっぱたいたのでハンスはテーブルの下に転がりました。ハンスは立ちあがり、口を言わないで、(もう一年待ってまたやってみよう、そのときはもっとうまくやれるだろう)と考えました。その一年が終わると、またこん棒をもちだし、埃をはらい、よく眺めて、「頑丈な強いこん棒だ。」と言いました。夜に泥棒たちが帰って次々とワインを飲み、頭が重たくなり始めました。するとハンスはこん棒をもちだして、親分の前に立ち、父親は誰か、と尋ねました。しかし、親分はまたハンスの横っ面を強くぶんなぐったのでハンスはテーブルの下に転がりました。ところが、まもなくハンスは立ちあがり、親分と強盗たちをこん棒でしたたかに打ちすえたので、強盗たちはもう手足を動かせなくなりました。
母親はすみに立って子どもの勇気と力に感心して見ていました。ハンスはやり終えると、母親のところへ行き、「今度は真剣にやったんだ。だけど今父親が誰なのかも知らなくちゃ。」と言いました。「ハンスや」と母親は言いました。「さあ、お父さんを見つけるまで探しに行きましょう。」
母親は親分から入口の鍵をとり、ハンスは大きな粉袋をとってきて、その中に金や銀や素晴らしいと思う物を何でも手当たり次第に袋がいっぱいになるまで詰め、背中に担ぎました。二人はほら穴を出ました。しかし、暗闇から日の光に出てきて、緑の森や花や鳥や空に浮かぶ朝の太陽を見てハンスは目を見開きました。ハンスはそこに立って、頭がすっかりまともでないかのようにあらゆるものに驚いてみとれました。母親は家へ帰る道を探し、ニ、三時間歩いた後、二人は無事に人里離れた谷に入り、自分たちの小さな家に着きました。父親は入口に座っていました。妻だと見てわかり、ハンスが息子だと聞くと、父親は嬉し泣きしました。というのは父親は二人がとっくに死んでしまったものと思っていたのです。
ハンスは、やっと12歳になったばかりでしたが、父親より頭一つ背が高くなっていました。三人は一緒に小さな部屋に入って行きましたが、ハンスがストーブのそばのベンチに袋を置いた途端、家じゅうがみしみし音を立て、ベンチが壊れ、次に床が壊れ、重い袋は地下室へ落ちていきました。「全くもう!」と父親は叫びました。「何だこりゃ?お前は家をめちゃめちゃに壊してしまったぞ」「心配いらないよ、お父さん」とハンスは答えました。「その袋に、新しい家を建てても有り余るくらい入ってるよ。」父親とハンスはすぐに新しい家を建て始め、家畜や土地を買い、農業を始めました。ハンスは畑を耕し、すきを地面に押し込んで押していくと、牛たちが引っ張る必要がないほどでした。次の年の春、ハンスは、「お金を全部とっといて、僕に100の目方の杖を作ってください、旅に出ようと思うんです」と言いました。
杖ができると、ハンスは父親の家を出て進んでいき、深い暗い森にやってきました。そこで何かバリバリ、バキンという音が聞こえてきて、下から上まで綱のようにぐるぐる巻きになっているもみの木が見えました。上の方を見ると、大きな男が木をつかんで柳の枝のように捻じっていました。
「おーい」とハンスは叫びました。「上で何をやっているんだい?」男は、「昨日たきぎを集めたから、今それを縛る縄をなっているんだ。」と答えました。(それはいいや、やつは力があるぞ)とハンスは考え、男に「そんなのほっといて、おれと一緒に来いよ。」と呼びかけました。男が降りてくると、ハンスは決して小さくないのに、そのハンスよりまるまる頭一つ分背が高い男でした。「お前の名前はこれから『もみ捻じり』だ」とハンスは男に言いました。
そうして二人が先へ進んでいくと、何かガンガンすごい力で打つ音が聞こえ、地面が一打ちごとに揺れました。そのあとまもなく、大きな岩のところに来て、その前で大男がこぶしで打ってその岩から大きな岩のかたまりを切り離していました。ハンスが、何をしているんだい?と聞くと、大男は「夜におれが寝ようとすると、熊や狼やそういう獣が来て、おれのまわりでフンフン、クンクン嗅ぎ回って、うるさいのさ。それで邪魔されないように家を建ててその中で寝ようと思ってるのさ」と答えました。(ああ!いいぞ)とハンスは考えました。(こいつも役にたつぞ)それで男に言いました。「家を建てるのはほっといて、おれと一緒に行こう。お前は『岩割り』という名前にしろよ。」
男が承知して、三人は森を通っていきましたが、どこへ行っても野の獣たちはビクッとして三人から逃げて行きました。日暮れに三人は人のいない古い城のところへ来て、そこに入り、広間に横になって眠りました。次の朝、ハンスが庭に入っていくと猪が突進してきました。しかしハンスはこん棒でしたたかに打ちすえたので猪はすぐ倒れました。ハンスはその猪を肩に担ぎ、運び込みました。三人は猪を串焼きにしておいしく食べました。そうして三人は毎日順番に二人が狩りに出かけ、一人は留守番をして一人9ポンド(約4kg)の肉を料理する、と取り決めました。もみ捻じりは最初に留守番で、ハンスと岩割りが狩りに出かけました。
もみ捻じりがせっせと料理をしていると、小さな皺だらけの年とった小人が城のもみ捻じりのところに来て、肉をくれと頼みました。「あっちへ行け、このコソ泥ちびめ」ともみ捻じりは答えました。「肉はやらないよ。」ところが、もみ捻じりがびっくりしたことに、小さな取るに足りない小人がとびかかってきて、こぶしでなぐりつけてきました。もみ捻じりは防ぐことができなくて地面に倒れ、はあはあ息を切らせました。小人は、すっかり怒りをぶつけて気がおさまるまで立ち去りませんでした。他の二人が狩りから帰ってきたとき、もみ捻じりは年寄りの小人のことも自分がさんざんなぐられたことも何も話さないで、(二人が留守番するようになったとき、あの小さなたわし野郎とやりあってみればいいのさ)と考えました。そうしてただそう考えるだけでもう面白がっていました。次の日、岩割りが留守番をしましたが、小人に肉をあげたがらなかったので、ひどい目にあわされ、もみ捻じりと全く同じことになりました。
夕方に他の二人が帰ってくると、もみ捻じりは岩割りがやられたのがはっきりわかりましたが、二人とも黙って、(ハンスにもあのスープを味わってもらわなくてはな)と思っていました。次の日はハンスが留守番になり、やらなければいけない台所仕事をしました。ハンスが立って鍋のあく抜きをしていると小人が来て、礼儀も何もなく、肉をくれ、と言いました。それでハンスは(かわいそうなやつだな、おれの分からいくらか分けてやろう。そうしたら他の二人の分が足りなくなることはないからな。)と思い、一切れ小人に渡しました。小人はそれを貪り食ってしまうとまた、肉をくれ、と言いました。お人よしのハンスはまた肉をあげて、それは大きな肉だぞ、それで満足しろよ、と言いました。しかし、小人はまた肉をくれと言いました。「お前は恥知らずだな」とハンスは言って何もあげませんでした。すると性悪な小人はハンスにとびかかってもみ捻じりや岩割りと同じ目にあわせようとしました。しかし小人は悪い相手を選んでしまいました。ハンスが大して腕をふるうまでもなくニ、三発なぐると、小人は城の階段を飛び下りていきました。
ハンスは追いかけようとしましたが、小人に蹴つまづいてばたりと倒れてしまいました。また起きあがった時は小人はもう先を進んでいました。ハンスは森まで小人を追いかけ、岩穴に入って行くのを見届けました。そして帰って行きましたが、その場所をしっかり心にとめておきました。他の二人が戻ったとき二人はハンスがぴんぴんしているので驚きました。ハンスは二人に出来事を話すと、二人ももうどういう目にあったかを隠しませんでした。ハンスは笑って、「そりゃ自業自得だな。なんでそんなに肉をけちったんだ?そんなに図体がでかいのに小人に負けるなんてみっともないじゃないか」と言いました。
そこで三人はかごと綱をもって、小人が入って行った岩穴に行き、ハンスとこん棒をかごに入れて下ろしました。穴の底に着くと、戸が見つかり、それを開けると、絵のように、いや言葉に言い表せないほど美しい乙女がそこにいました。そして娘のそばにあの小人が座っていましたが、ハンスを見るとオナガザルのように歯をむき出して笑いました。ところが娘は鎖につながれてとても悲しそうにハンスを見ました。ハンスはこの娘をとてもかわいそうになり、(娘を性悪な小人から救い出さなければならないぞ)と思い、小人をこん棒で強く打ちすえたので、小人は死んで倒れました。途端に鎖が乙女からはずれて落ちました。ハンスは娘の美しさにうっとりしました。娘は、ハンスに言いました。「私は王様の娘なのですが、無礼な伯爵がお城から私をさらい、岩の間にとじこめました。私が何も伯爵に言おうとしなかったからです。伯爵はあの小人を見張りにおいて、私はとても惨めで苦しい思いをしました。」そのあとハンスは娘をかごにのせ、引き上げさせました。
かごはまたおりてきましたが、ハンスは二人の仲間を信用しないで、(あいつらはもう不実なところをみせたことがある。おれに小人のことを何も言わなかったじゃないか)と考えました。(おれにどんなことを企んでいるかわからないぞ)それで、かごにこん棒を入れました。実際そうしてよかったのでした。というのはかごが半分ほど上がると、二人はまた落としてよこしました。ハンスが本当にかごにのっていたら、死んでいたでしょう。しかし、深い底からどうやって抜けだしたらいいものやらわかりませんでした。何回もあれこれ考えてみるものの良い知恵が浮かびませんでした。「全く情けない」とハンスは独り言を言いました。「ここで死ぬのを待つだけとはな」こうして行ったり来たりしていると、また先ほど娘が座っていた小さな部屋に来ました。すると、小人の指にきらきら光っている指輪が見えました。そこでハンスは小人の指から抜いて自分の指にはめ、指輪を回すと、突然頭の上でさらさら擦れ合うような音が聞こえました。
見上げると空気の精が上を飛んでいるのが見えました。空気の精は、あなたはわたしたちのご主人です、ご用はなんでしょうか?とたずねました。ハンスははじめ驚いて口が言えませんでしたが、そのあと、地上に運んでほしい、と言いました。
空気の精はすぐに命令に従い、まるでハンスが自分で上へ飛んでいってるようでした。ところが上へ着いてみると誰も見当たりませんでした。もみ捻じりと岩割りは急いで去って美しい乙女を一緒に連れて行ってしまったのです。しかし、ハンスが指輪を回し、空気の精がくると、二人は海の上だと教えてくれました。
ハンスは止まらずに走りに走りました。とうとう海辺につくと、海のはるかかなたに不実な仲間がのっている小さな船が見えました。激しい怒りに駆られて、自分が何をしているのかも考えず、ハンスはこん棒を手に海に飛び込み、泳ぎ始めました。しかし、こん棒の目方が100あったので、ハンスは海の底の方に引きずられていき、あやうく溺れ死にそうにになりました。それであわやというところで指輪を回し、空気の精が来て、稲妻のように速く船に乗せました。ハンスはこん棒を振り回し、腹黒い仲間にふさわしい報いを与え、二人を海に放り投げました。娘はとても恐ろしい目にあっていましたが、今度もハンスに救われたのでした。それからハンスは美しい乙女と一緒に船に乗り、故郷の父親と母親のところへ送って行き、やがて娘と結婚しました。みんなの喜びは大変なものでした。