ズルタンじいさん







ズルタンじいさん メルヘン

メルヘンのグリム兄弟
7.8/10 - 55
ズルタンじいさん
昔、お百姓がズルタンという名前の忠実な犬を飼っていましたが、年をとって歯が全部なくなってしまったので、もうなにも咥えることができませんでした。ある日、お百姓は、おかみさんと戸口の前に立っていて、「明日、年寄りのズルタンを撃ち殺すつもりだ、もう役に立たないからな。」と言いました。おかみさんは、忠実な犬を哀れに思って、「ズルタンはわたしたちにとても長く仕えてくれて、とても忠実だったのだから、飼っていた方がいいわ。」と答えました。「何だって?お前はあまり頭がよくないな。あれには歯が一本もないんだぞ。一人の泥棒もあれをこわがらないよ。もういらないよ。おれたちに仕えたとすれば、その分たっぷりえさをもらったさ。」と男は言いました。

可哀そうな犬は、近くのひなたで体を伸ばしねていて、これが全部聞こえ、明日が自分の最後の日になるんだなと悲しくなりました。犬にはいい友達の狼がいて、夜にそっと出て森の狼のところへ行き、自分を待っている運命のことをこぼしました。「ね、元気を出せよ、お前を難儀から救ってやるからさ。いいことを思いついたよ。明日朝早く、お前の主人はおかみさんと一緒に干し草を作りに行くよな。それで子供も一緒に連れて行くだろ。だれも家に残ってないからね。仕事中、子供をやぶの日陰にいつもおいとくから、その子を守りたいみたいにしてお前もそこにねるんだ。それでおれが森から出てきて子供を連れ去るよ。お前は子供を取り返すふりですぐおれのあとを追って走ってこなくはいけない。おれは子供を落とすから、お前は両親のところへ子供を連れ帰るのさ。それで親たちはお前が子供を救ったと思って、すごく有り難がってお前に悪いことをしないよ。それどころかとても大事にしてくれて何も不足がないようにしてくれるさ。」と狼は言いました。

その計画は犬の気に入りました。そして手配したように実行されました。父親は、狼が子供をくわえて野原を走って行くのを見ると悲鳴をあげましたが、年寄りのズルタンが子供を連れ戻ると、大喜びし、犬を撫でて、「お前の毛一本だって傷つけないぞ。お前が生きてる間おれのパンをただで食わしてやる。」と言いました。そしておかみさんに向かって、「すぐに家へ帰って、噛まなくてもいいように年寄りのズルタンにパンがゆを作ってやれよ。それからおれのべっどから枕をもってこい、それを寝るのにやろう。」と言いました。

それ以来、年寄りのズルタンはこの上ないほど暮らしが楽になりました。その後まもなく狼が訪ねてきて、万事とてもうまくいったことに喜びました。「だけどなあ、機会があっておれがお前の主人の太った羊をさらっていったとしても、お前はちょっと片目をつむって見て見ぬふりをしてくれよ。」と狼は言いました。「そんなこと当てにしないでくれよ。おれは主人に忠実でいるよ。それを認められないよ。」と犬は答えました。狼は、犬がこれを真面目に言ったはずがないと思って、夜に忍んできて、羊をとっていこうとしました。しかし、お百姓は、忠実なズルタンが狼の計画を話しておいたので、狼を捕まえ、殻さおでこっぴどくたたきました。狼はそっと歩くしかありませんでしたが、犬に「待ってろよ、この悪党、仕返ししてやるからな。」と言いました。

次の朝狼は猪を使いにして、この事件に決着をつけるため犬に森へ来いと挑戦してきました。年寄りのズルタンは3本しか足のない猫以外は味方してくれる誰も見つけられませんでした。そして一緒に出かけたとき可哀そうな猫は足をひきずってると同時に痛さで尻尾を空中に伸ばしていました。

狼と友達はもう指定した場所に来ていましたが、敵が近づいてくるのを見たとき、犬が軍刀を持ってきていると思いました。というのは、猫の伸びている尻尾を軍刀と間違えたからです。そして可哀そうな猫が、3本足でぴょこたんすると、そのたびに自分たちに投げる石を拾っているのだとしか考えられませんでした。それで二人とも怖くなり、猪は木の下に這いこみ、狼は木の上に跳びあがりました。

犬と猫はやってくると誰も見えないので不思議に思いました。しかし、猪は隠れきれないで耳の片方がつき出ていました。注意深く見まわしている間に、猪が耳を動かしたので、猫はそこでネズミが動いているのだと思い、それに跳びついてがぶっと噛みつきました。猪は恐ろしい悲鳴をあげて、「悪いやつは、木の上だよ」と叫びながら逃げて行きました。犬と猫は見上げて狐を見ました。狐は自分がとても臆病なのを見せてしまったことを恥ずかしく思い、犬と仲直りしました。


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