12人兄弟

昔、一緒に幸せに暮らし、12人の子供がいる王様とお后様がいました。しかし子供たちはみんな男の子で、あるとき王様は「今度生まれてくる13人目の子供が女の子なら、その子の財産が大きくなって国がその子だけのものになるように、12人の男の子は殺そう。」と妻に言いました。王様は12個の棺まで作らせ、もうかんなくずも詰められて、それぞれに小さな死枕もありました。そしてその棺を錠をかけた部屋に持っていかせ、その鍵をお后に渡して、だれにもこのことを話さ
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グリム兄弟のほとんどテイルズ

かえるの王さま、あるいは鉄のハインリヒ 人の願いがまだ叶っていた昔、一人の王様が住んでいました。娘たちはみな美しく、とりわけ1番下の娘はとても美しかったので、沢山のものを見てきた太陽もその娘の顔に光を当てたときはいつも驚くばかりでした。王様のお城のすぐ近くに大きな暗い森があり、その森の古いライムの木の下に泉がありました。暖かい日にはその王様の子供は森にでかけ、涼しい泉のそばに座り、飽きてくると金の玉をとり出し、高く放り投げてつかまえました。この玉がお気に入りの遊び道具でした。 あるとき、金の玉は、王女さまがつかまえようとのばしていた小さな手に落ちてこないで、その向こうの地面に落ち、水の中に転がっていってしまいました。その玉は目で追いかけましたが、消えてしまいました。その泉はとても深いので底が見えませんでした。それで王女さまは泣き出し、だんだん大声で泣きましたがなぐさめられませんでした。こんなふうになげいていると、誰かが「お姫さま、どうして泣いてるの?石だってかわいそうに思うくらいに泣いてるもの。」と言いました。 その声の来たほうに顔を向けると、蛙が大きな醜い頭を水から伸ばしているのが見えました。「まあ、蛙さん、あなただったの
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猫とねずみとお友だち ある猫がはつかねずみと知り合いになり、猫がねずみに、あなたをとても好きだし友達になりたいんだ、としきりに言ったので、とうとうねずみは猫と一緒に暮らし家事をすることを承知しました。「だけど、冬に備えなくてはいけないね。そうしないとひもじい思いをするよ。」と猫は言いました。「それでネズミくん、君はあちこち出歩けないよ。そうしないといつか罠にかかるだろうからね。」 親切な忠告に従い、一壺の脂肪を買いましたが、その壺をどこに置いたらいいかわかりませんでした。だいぶ考えた後、とうとう猫が、「それをしまっておくのに教会よりもよい場所はわからないね。だってそこからは誰もものをとっていかないからな。祭壇の下に壺を置いて、本当に困るまでそれに触らないでおこうよ。」と言いました。 それで壺は安全な場所に置かれましたが、まもなく、猫はそれがとても欲しくなり、ねずみに言いました。「ネズミくん、話したいことがあるんだ。いとこが息子を産んで、僕に名付け親になってもらいたいと頼んでるんだよ。その子は白に茶色のぶちで、洗礼のとき洗礼盤の上で抱くことになっているんだ。今日は出かけさせてくれ。それで君だけでうちのことをや
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聖母マリアの子供 大きな森のすぐ近くに木こりの夫婦が住んでいました。子供は一人だけで、3歳の女の子でした。しかし、夫婦はとても貧しかったのでもう毎日食べるパンがなくなり、どうしたら子供に食べ物を手に入れられるかわかりませんでした。ある朝、木こりは悲しみにくれながら森の仕事にでかけました。そして木を切っていると、突然、頭に輝く星の冠をつけている背の高い美しい女の人が前に立ち、言いました。「私は聖母マリア、イエス・キリストの母です。お前は貧しく困っていますね。子供を私のところにつかわしなさい。その子を連れて行き、母となり、世話をします。」木こりはその言葉に従い、子供を連れていき、聖母マリアに渡しました。そして聖母は子どもを天国へと連れていきました。天国で子供は順調に生活し、砂糖菓子を食べ、甘いミルクを飲みました。また服は金でできており、天使たちと遊びました。 娘が14歳になったある日、聖母マリアは呼んでいいました。「子供よ、私は長い旅にでかけます。だからお前が天国の13の扉の鍵を管理するのです。このうちの12の扉は開けて中にある栄光を見てもいいです。しかし13番目は、この小さな鍵はその扉のものですが、開ける
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いばら姫 昔、子供ができなくて、毎日「ああ、子供がいればなあ」と言っていた王様とお后さまがいました。しかしあるときお妃さまが水浴びしていると、蛙が水から陸にあがり、「あなたの望みはかなえられますよ。1年経たないうちに娘が産まれます。」と言いました。 蛙の言ったことが本当になり、お后さまはとても可愛い女の子を産みました。王様は喜びを抑えられなくて、大宴会を開くことを命じました。そして親戚や友達や知人だけでなく、やさしく子供によい運をつけるようにと賢い女の人たちも招きました。この王国には13人の賢い女の人たちがいましたが、食事を出す金のお皿が12人分しかなかったので一人は家に残さなければなりませんでした。 宴会はとても豪華に開かれ、終わりになったとき、賢い女たちが赤ちゃんに魔法の贈り物を授けました。一人は美徳を、別の人は美しさを、3人目は富を、等々、人がこの世で望むあらゆるものを授けていきました。 11人の賢い女が約束を言い終えたとき、突然13人目の賢い女が入ってきました。招待されなかったので仕返ししようと思ったのです。挨拶もしないで、誰も見もしないで、大声で「王様の娘は15歳のとき紡錘に刺され、倒
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ルンペルシュティルツヒェン 昔、貧しいけれど、美しい娘がいる粉屋がいました。さて、この粉屋がたまたま王様のところに行き、話すことになりましたが、自分を重要にみせるために、「私にはわらを紡いで金にできる娘がいます。」と王様に言いました。王様は「それは、とても気にいる技だな。もし娘がお前が言うように賢いなら、明日宮殿に連れて来い。テストしてみよう。」と粉屋に言いました。 そして、娘が連れて来られると、王様はわらがまったくいっぱいある部屋に連れて行き、糸車と巻き枠を渡し、「さあ、仕事にかかれ、もし夜の間にこのわらを紡いで明日早朝までに金にしなければ、お前は死ななければならん。」と言いました。そうして自分で部屋に錠をかけ、娘をひとり部屋に残しました。それでそこで可哀そうな粉屋の娘は座り、どうしたら命が助かるか判らなく、またわらを紡いで金にする方法も見当がつかないので、だんだん恐くなり、とうとう泣き出しました。 しかし、突然ドアが開き、1人の小人が入ってきて、「今晩は、粉屋の娘さん、どうしてそんなに泣いているの?」と言いました。「ああ、わらを紡いで金にしなければならないの。でもどうやるのかわからないのよ。」と娘は答えました
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キャベツろば 昔、若い猟師がいて、獲物を待ち伏せするため森へ入って行きました。猟師は元気よく明るい性格で、草笛を吹きながら、そこへ向かっていました。すると、醜く年とった老婆が近づいて来て、猟師に「こんにちは、猟師さん、あなたは実に陽気で満足そうだね。だけど私はお腹がすいて喉が渇いているんだよ。お願いだから、施しをしておくれ。」と言いました。猟師は貧しい年寄りに同情して、ポケットの中をさぐり、やれるだけのお金をあげました。 それから猟師は先へ進もうとしましたが、老婆がひきとめ、「猟師さん、私が言うことをお聞き。あんたのやさしい心のお返しに贈り物をするよ。今はずっと道を進みなさいよ。だけど少しすると一本の木につくからね。その木に9羽の鳥がとまって、かぎづめで一枚のマントを持ってそのマントをうばいあいしているんだ。鉄砲をとって鳥たちの真ん中を撃ちな。するとあんたにマントを落としてよこすけど、鳥たちの一羽が怪我して、死んで落ちるよ。マントを持って行きな。そのマントは魔法のマントだよ。肩にはおると、どこかの場所に行きたいと願いさえすれば、瞬きするうちにそこに行けるよ。死んだ鳥の心臓をとりだして、丸呑みしな。す
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奇妙な音楽家 昔、不思議な音楽家がいました。この音楽家が、まったく一人で森を通っていろいろなことを考えていましたが、何も考えることが残ってなくなった時、(この森では時間の経つのがいやに遅いなあ。いい連れを見つけよう。)と思いました。それから、背中からバイオリンをとり、ひくと、音が木々の間にこだましました。まもなく一匹の狼が茂みから駆けてきました。「ああ、狼が来るよ。狼は欲しくないな。」と音楽家は言いましたが、狼は近づいて来て、「ああ、音楽家さん、なんてきれいにひくんでしょう。私もそれを習いたいです。」と言いました。「すぐに習えるよ。」音楽家は言いました。「私がいいつける何でもやりさえすればいいんだ。」「まあ、音楽家さん、生徒が先生に従うように、私はあなたに従います。」と狼は言いました。音楽家は狼についてくるように言いました。しばらく道を進んだ時、中にうろがあり真ん中が割れている古い樫の木のところに来ました。「見ろよ、バイオリンを習うなら、前足をこの割れ目に入れろ。」と音楽家は言いました。狼は従いました。しかし、音楽家は素早く石を拾い、ひとうちであっというまに二本の前足をくさびのように押し込んだので、
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兄と妹 兄は妹の手をとり、「お母さんが亡くなってから僕たちは全然幸せじゃないね。義理のお母さんは毎日僕たちをぶって、近くへ寄ると足で蹴ったり。ごはんは残り物のパンくずだし。テーブルの下にいる犬の方がましな暮らしをしてるよ。だって、あの人は選んだご馳走をよく投げてやってるもの。ああ、お母さんが生きててくれればなあ。さあ、僕たちは広い世の中に出ていこう。」と言いました。 二人は草地や野原や岩地を越えて丸一日歩きました。そして雨が降ると妹は「天と私たちの心が一緒に泣いてる。」と言いました。夜になって大きな森に着きました。悲しみと空腹と長歩きのためとても疲れていたので木のほらに横になり、眠りました。次の日、太陽はすでに空高くのぼっていて、木の中を暑く照らしていました。それで兄は「妹よ、僕はのどがかわいた。小さな小川のことを知ってれば、行って水を飲むのだけど。水の流れる音が聞こえるような気がする。」と言いました。兄は立ち上がって妹の手をとりました。それから二人で小川を探しに出発しました。しかし意地が悪い継母は魔女でした。そして二人の子供たちが出ていく様子を見ていて、密かに、魔女が忍び寄るやり方で、あとを
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ラプンツェル 昔、長い間子供に恵まれない夫婦がいました。が、とうとう妻は神様が願いをかなえてくれる望みをもちました。この人たちの家の奥に素晴らしい庭がみえる小さな窓がありました。そこは最も美しい花とハーブでいっぱいでした。しかし、そこは高い塀で囲まれていて、魔女のものだったので誰もあえて入ろうとはしませんでした。その魔女は大きな力を持っていて、世界全体に恐れられていたのです。 ある日、妻は窓のそばに立ち、庭を見下ろしていました。するとそのとき、とても美しいカブラギキョウ(ラプンツェル)が植えられている花壇が目に入りました。それはとてもみずみずしい緑だったので欲しくなり、どうしてもいくらか食べてみたくてたまりませんでした。この欲求は日増しに強くなり、少しも手に入れることができないと知っているので、妻は とてもやつれて、顔色がわるく、惨めにみえました。それで夫は驚いて、「どうしたんだい?お前」と尋ねました。「ああ、家のうらの庭にあるカブラギキョウをたべられなくちゃ死んでしまうわ。」と妻は答えました。 男は、妻を愛していたので、(妻を死なせるより前に、どんな犠牲を払っても、自分でカブラギキョウをとってこよ
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ヘンゼルとグレーテル 大きな森のすぐ近くに、木こりが、おかみさんと子供たちと一緒に住んでいました。男の子はヘンゼルで女の子はグレーテルという名前でした。木こりにはほとんど食べるものがなく、その土地に大飢饉が見舞ったとき、もう毎日食べるパンさえ得られませんでした。木こりは夜ベッドに寝てこれを考え、心配で寝返りをうちながら、呻って、「おれたちはどうなるのかな?自分たちの分ももう何もないのにどうやって可哀そうな子供たちに食べさそうか?」と言いました。「あんた、こうしたらどう?」とおかみさんは答えました。「明日の朝早く子供たちを森の木の一番茂っているところへ連れていくの。そこで子供たちに火をたいてあげて、一人ずつもう一つパンをあげるでしょ。それから私たちは仕事に行って子供たちをおいておくの。あの子たちは家へ帰る道がわからないだろうから、縁を切れるわよ。」「まさか、おまえ、そんなことしないよ。子供たちを森においてくるなんて我慢ならない。けものがすぐ来て子供たちを引き裂いてしまうだろうよ。」「まあ、ばかね。それじゃあ私たち4人とも飢えて死んでしまうよ。あんたは私たちの棺桶の板にかんなをかけた方がいいよ。」それでおかみさ
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わらと炭とそら豆 村に貧しい年とったおばあさんが住んでいました。おばあさんはそら豆を一皿取ってきて、煮ようとして、かまどに火をおこし、火が早く燃えるように一つかみのわらをくべました。そら豆を鍋に空けていたとき、一粒が、おばあさんにみえないで落ち、わらのそばの土に転がりました。それからまもなくかまどの火から燃えている炭が跳ねてその二人のところに落ちました。すると、わらが「やあ、君たち、どこからここに来たの?」と言いました。炭が、「僕は運よく火から跳び出たよ。力いっぱい逃げなかったら、きっと死んでいたな。燃えて灰になってしまうところだった。」 そら豆が、「私もすんでのところで逃げたのよ。だけどおばあさんが鍋に入れてしまったら、仲間みたいに情け容赦なくスープにされてしまうところだったわ。」と言いました。「僕も同じ目にあうところだったよ。」とわらが言いました。「おばあさんは僕の兄弟たちをみんな殺して火と煙にしちゃった。一度に60人をつかまえて命を奪ったんだ。僕はさいわいにおばあさんの指をすりぬけたけどね。」「だけど僕たちどうしようか?」と炭がいいました。「思うに」と豆が答えました。「私たちは運よく死ななくて済ん
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勇ましいちびの仕立て屋 ある夏の朝、小さな仕立て屋は窓のそばの仕事台に座って、機嫌がよく一生懸命縫っていました。すると、下の通りをお百姓の女が、「いいジャムだよ、安いよ、いいジャムだよ、安いよ」と叫んで来ました。これは仕立て屋の耳に心地よく聞こえました。仕立て屋はきゃしゃな頭を窓から伸ばし、「ここへ来てよ、おばさん、ここで品物が売れるよ。」と呼びました。女は重いかごを持って3段あがって仕立て屋のところに来ました。そして仕立て屋は女につぼを全部広げさせ、全部を調べ、持ち上げ、鼻で匂いを嗅ぎ、やっと、「おばさん、そのジャムはおいしそうだ。だから4オンス測ってくれ。四分の一ポンドでも構わないよ。」と言いました。 たくさん売れると思っていた女は、仕立て屋が望んだものを渡しましたが、ぷんぷん怒ってぶつくさ言いながら立ち去りました。「さて、このジャムを神様が祝福してくださいますように」と小さな仕立て屋は叫びました。「そして食べた私に健康と力を与えてくださいますように。」それで戸棚からパンを出し、ちょうど半分に切り、ジャムを塗りました。「これは苦くないだろう。」と仕立て屋は言いました。「だが食べる前に、上着を終わらせよう。
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コルベスさま 昔、おんどりとめんどりがいて、一緒に旅をしようと思いました。それでおんどりは、四つの赤い車輪がついている美しい車を作り、それに四匹のネズミをつなぎました。めんどりがおんどりと一緒にその車に乗り、一緒に出かけました。まもなく猫に会い、猫は、「どこに行くの?」と言いました。おんどりが、「コルベスさまの家にいくところだ。」と答えました。「一緒に連れてってよ。」と猫が言いました。おんどりは、「いいとも。後ろに乗って。前だと落ちるかもしれないから。赤い車輪を汚さないように気をつけてね。車輪たちや、転がれ。ネズミたちや、チューチュー鳴け。僕たちはコルベスさまの家へいくところ。」 このあと、石臼が来て、それから卵が、それからあひるが、それから留針が、最後に針が来て、みんな車に乗り、一緒に行きました。ところが、コルベスさまの家に着くと、コルベスさまは留守でした。ネズミたちは車を納屋に入れ、めんどりはおんどりと一緒に止まり木に飛び、猫は暖炉のそばに座り、あひるは井戸の柱の上に座りました。卵はタオルの中へ転がって入り、留針は椅子のクッションに刺さり、針はベッドに飛び乗り枕の真ん中に刺さり、石臼は戸の上に寝
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フィッチャーの鳥 昔、貧しい男のなりをして物乞いをして家々を訪ね、きれいな娘をさらう魔法使いがいました。男がどこへ娘たちを連れて行ったのか誰もわかりませんでした。というのは娘たちは二度と見つからなかったからです。ある日、男はきれいな娘が三人いる男の家の前に現れました。男は貧しい体の弱そうな乞食のようにみせて、中に施しのものを集めているかのように背中にかごを背負っていました。男は、少し食べ物をください、と言い、一番上の娘が出てきて、パンを一切れ渡そうとしました。そのとき男はただ娘に触れただけで、娘はかごに跳びこまされました。すぐに男は大股で急いで去り、娘を暗い森の真ん中に立っている自分の家に運んで行きました。家の中の何でも豪華でした。男は娘に欲しいものは何でも与え、「ねえ、君、君は僕のところできっと幸せだろう。君が望むものを何でももらえるんだからね。」と言いました。こうして2,3日経つと、男は、「僕は旅にでかけなくてはならない。ちょっとの間君をひとりにしておく。さあ、家の鍵だよ。どこへ行ってもいいし、何でも見ていいよ。ただ一つの部屋はだめだ。そこはこの小さい鍵で開くんだが、そこにいくと君の命をとることにす
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ねずの木の話 今はもうずいぶん昔、二千年は前ですが、金持ちの男がいました。妻は美しく信心深い人で、二人は心から愛し合っていました。しかし、二人には、とても欲しいと望んだけれども、子供ができませんでした。妻は昼も夜も子供をお授けくださいとお祈りしましたがそれでもだめでした。二人の家の前に中庭があり、そこには一本のビャクシンの木がありました。冬のある日、妻はその木の下に立ち、リンゴの皮をむいていましたが、そうしているうちに指を切り、血が雪に落ちました。「ああ」と妻は言い、すぐため息をついて、目の前の血を見て、とても惨めに思いました。「ああ、血のように赤く、雪のように白い子供がいたらいいのに」こうして話している間にとてもしあわせな気分になり、本当に子供が生まれるような気がし、それから家に入りました。 一か月経つと雪が消え、二か月すると一面緑になり、三か月経つと花が咲き、四か月すると森の木々の緑が濃くなり緑の枝が密にからみあい、鳥たちがさえずりその声が森にこだまし、花が木から落ちました。五カ月経って、妻はビャクシンの木の下に立ちました。その木はとても甘い香りがして妻の心が躍りました。妻は膝まづき、喜びに我を
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白雪姫 昔、真冬に、雪が羽のようにチラチラと空から降っているとき、窓のところでお后が縫物をしていました。窓枠は黒檀でできており、縫物をして窓から雪を見ている間に、お后は針で指を刺してしまい、3滴の血が雪の上に落ちました。その赤は白い雪の上できれいに見え、お后は「雪のように白く、血のように赤く、窓枠の木のように黒い子供が欲しいわ…」と思いました。 その後まもなくお后は女の子を産みました。その子は雪のように白く、血のように赤く、髪は黒檀のように黒かったので、白雪姫と呼ばれました。子供が生まれたとき、お后は亡くなりました。 1年過ぎて王様は新しい妻を迎えました。このお后は美しい人でしたが、高慢で気位が高く、他のだれかが自分より美しいのは我慢できませんでした。お后は不思議な鏡を持っていて、その鏡の前に立ち、映っている自分を見て、「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」と言いました。 鏡は答えました。「お后さま、あなたが一番美しい。」 するとお后は満足しました、鏡は真実を言うと知っていたからです。 しかし白雪姫が成長していって、だんだん美しくなり、7歳のときは昼と同じくらい美しく、お后自身より美し
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恋人ローランド 昔、本物の魔女がいて、娘が二人ありました。一人は醜く意地悪でしたが、この娘は実の娘なので可愛がっていました。もう一人は美しく善良でしたが、継娘なので嫌っていました。あるとき継娘がきれいなエプロンをもっていたところ、もう一人の娘がとても欲しかったので、妬ましくなり、母親にそのエプロンを絶対欲しいと言いました。「お前、静かにおし。お前に持たせてやるとも。お前の姉さんはとっくに死んで当然だったのだよ。今夜眠っている時、行ってあの子の頭を切り落としてやるさ。お前は気をつけてベッドの向こう側にいるようにして、前の方にあの子を押すんだよ。」と老婆は言いました。可哀そうな娘は、ちょうどその時隅にいて全部聞かなかったなら、お終いだったでしょう。 一日中、娘はあえて外出しませんでした。そして寝る時間がくると、魔女の娘は遠い側に寝るため先にベッドに入りました。しかし、寝入るともう一人の娘は魔女の娘を前にやさしく押して、自分は壁に近く、後ろの位置に寝ました。夜中に、老婆は忍び入って来て、右手に斧を持ち、左手で外側に誰か寝ているか確かめ、それから両手で斧を握ると、実の子供の頭を切り落としました。 老婆が行って
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黄金のがちょう 三人の息子がいる男がいました。末っ子はアホッコと呼ばれて、事あるごとにさげすまれ、からかわれ、あざ笑われました。 さて、一番上の息子が森へ木を切りにいこうとして、出かける前におなかがすいたり喉がかわいたりしないようにと母親がきれいな甘いケーキと葡萄酒をひと瓶持たせました。 森へ入ると、白髪の年とった小人に会いました。小人は「こんにちは、ポケットからケーキをひとつくれませんか?それから葡萄酒を一口飲ませてください。私はとてもおなかがすいて喉が渇いているのです。」と言いました。しかし、賢い息子は「もしお前にケーキと葡萄酒をあげたら、私のがなくなるじゃないか、あっちへ行けよ」と答えて、小人を残して、行ってしまいました。 しかし、木を切り倒し始めるとまもなく手元が狂って、腕が斧で切れ、家へ帰って包帯をしなければいけなくなりました。これは白髪の小人がやったことでした。 このあと、二番目の息子が森へ入りました。そして、母親は一番上の息子と同じように、ケーキと葡萄酒をあげました。白髪の小人が同じように息子に会い、ケーキを一切れと葡萄酒を一口頼みました。しかし二番目の息子も十分賢く、「お前にあげたら自
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幸せハンス ハンスは主人に七年仕えました。それで主人に「だんなさま、年季が明けました。もうくにの母のところに帰りたいんです。お手当をください。」と言いました。主人は「お前はかげひなたなくよく働いてくれた。それだけちゃんと手当てもはずむぞ。」と答えて、ハンスに頭と同じくらい大きい金の塊を渡しました。ハンスはポケットからハンカチを引っ張り出し、その塊を包んで肩にかけ、故郷に帰りはじめました。 足を交互に出しながら進んでいくと、馬に乗った人が目にとまりました。元気のよい馬に乗って速く楽しそうに走っていくのです。「いいなあ!」とハンスは大声で言いました。「馬で行くってなんていいんだろう。椅子に座っているようにして、石につまずかないし、靴は擦り減らないし、それで知らないうちに先へ進むんだもんなあ。」馬の乗り手はその声が聞こえて止まり、「やあ、ハンス、じゃどうして歩いているんだい?」とさけびました。「歩かなくちゃいけないんですよ。」とハンスは答えました。「この塊を家に持って行くもんでね。確かに金なんだけど、このせいで頭をまっすぐにあげられないし、肩は痛いし。」「なあ」と乗り手が言いました。「取り変えようか。お
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ガラス瓶の中の化け物 昔、朝早くから夜遅くまで精を出して働く貧しい木こりがいました。やっといくらかお金を貯めたとき木こりは息子に、「お前はおれのたった一人の子供だ。おれは汗水流して稼いだ金をお前の教育に使うよ。お前がなにかまともな仕事を覚えれば、おれが年とって、手足がこわばり、家にいなければならなくなったとき、養うことができるよな。」と言いました。 そこで男の子は高校へ入り、熱心に学んだので教師たちは誉め、男の子は長い間そこにいました。2年終えたけれどまだ全部覚えきったわけではなかったとき、父親が稼いだ少しのお金が使い果たされてしまい、男の子は父親のところへ戻るしかなくなりました。 「あ~あ、もうお前にあげられない。この厳しい時世では毎日のパンを買うのに十分なだけで、それ以上は一ファージングも稼げないんだ。」と父親は悲しそうに言いました。「おとうさん」と息子は答えました。「そんなこと心配しないで。もしそれが神様のおぼしめしなら、将来ぼくの役にたつようになるんだよ。僕は早くそれに慣れようと思うよ。」父親が木を切って束ねる手伝いでお金を稼ごうと森へでかけようとすると、息子が「僕も一緒に行って手伝うよ。」と言いま
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きょうかたびら かつて、7歳の男の子がいる母親がいました。その子はとても美しくて愛らしいので見る人は誰でもその子を好きになりました。また、母親自身もこの世の何よりもこの子を大事にして可愛がっておりました。ところが、男の子が急に病気になり、神様がこの子をひきとりました。このため母親は悲しみがいやされないで昼も夜も泣き通しでした。しかし、それからまもなく、子供が埋められたあと、生きていたときにいた場所や遊んだ場所に子供が出てきました。そして母親が泣くとその子も泣き、朝がくると消えました。 しかし、母親は泣きやまず、子供はある夜、ひつぎの中におさめられたとき着ていた小さな白い経帷子を着て、頭の周りに花の輪をつけて、やって来て、母親のベッドのそばに立ち、「ああ、おかあさん、お願いだから泣くのを止めて。そうしないと僕はお棺の中で眠れないんだよ。たっておかあさんの涙が落ちるから僕の経帷子が乾くことがないんだもの。」と言いました。母親はそれを聞いて心配になり、もう泣きませんでした。 次の夜、子供が手に小さな明かりを握ってまた来て、「ほら、おかあさん、僕の経帷子はだいぶ乾いたよ。だからお墓で眠れるよ。」と言いました。
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