グリム兄弟のほとんどテイルズ

グリム兄弟 (ページ 2)

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いばらの中のユダヤ人

いばらの中のユダヤ人昔、金持ちの男がいました。その男には真面目によく働いて仕えた下男がいました。この下男は毎朝一番先に起きて、夜一番あとに休んで寝ました。誰も引き受けたがらない難しい仕事があるときはいつも、この下男が一番先にとりかかりました。それだけでなく、決して文句を言わないで何でも満足し、いつもほがらかでした。 一年の務めが終わったとき主人は下男に手当てを出しませんでした。というのは(これが一番賢いやり方だわい。金を節約できるし、あいつは出ていかないで黙って務めるだろうからな)と思ったのです。下男は何も言わないで一年目と同じように二年目も仕事をしました。それで二年目の終りにも手当てを受け取りませんでしたが、楽しそうにしてやはりとどまって務め続けました。 三年目も過ぎたとき、主人は考えて、ポケットに手をつっこみましたが、何もとりだしませんでした。するととうとう下男が、「だんなさん、私は三年間真面目に務めました、お願いですから、その分のお手当をください。私は出ていってもう少し世間を見てまわりたいのです。」と言いました。 「いいとも、そうだな」と年とったけちんぼは答えました。「お前はよく務めてくれたよ、だから気持ちよく手当てをだせるよ。」そうしてポケットに手を入れましたが、たった三ファージングだけ数えて、「ほら、毎年一ファージングだ。これは大した金で気前のいいことだぞ。こんなに払ってくれるだんなはあまりメルヘン 読む →
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こわがることをおぼえるために旅にでた若者

こわがることをおぼえるために旅にでた若者ある父親に息子が二人いました。兄は賢くて気が利き、何でも出来ましたが、弟はまぬけで、何も習い覚えないし何もわかりませんでした。人々は弟を見ると、「父親に厄介をかけそうなやつがいる。」と言いました。何かしなければならないことがあると、それをやらされるのはいつも兄でしたが、しかし、時間が遅いとか夜に、道が墓地や他の陰気な場所を通るときに、父親が何かとってくるようにいいつけると、「えっ、嫌だよ、お父さん、そこには行かないよ。ぞっとするもの。」と答えました。兄は怖かったからです。また、夜に暖炉のそばで気味の悪い話がされると、聞いている人たちが時々「ええっ、ぞっとするよ。」と言いました。弟はすみに座って、他の人たちと一緒に聞き、どういうことを言ってるのかわかりませんでした。「いつも『ぞっとする、ぞっとする、ぞっとしない』と言ってるな。それも僕がわからない技にちがいない。」と弟は考えました。 さて、ある日、父親が弟に「よく聞けよ、そこのすみのやつ、お前は大きくなって力もでてきた。お前も自分で食っていく何かを習わなくちゃな。見てみろ、お前の兄はしっかり働いている。だが、お前はこれっぽちも稼がないんだからな。」と言いました。「それでね、お父さん」と弟は答えました。「何かを習いたい気はうんとあるんだ。本当に、もしやれるなら、ぞっとする方法を習いたいんだ。まだそれが全然わからないんだよ。」兄はこれを聞メルヘン 読む →
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兄と妹

兄と妹兄は妹の手をとり、「お母さんが亡くなってから僕たちは全然幸せじゃないね。義理のお母さんは毎日僕たちをぶって、近くへ寄ると足で蹴ったり。ごはんは残り物のパンくずだし。テーブルの下にいる犬の方がましな暮らしをしてるよ。だって、あの人は選んだご馳走をよく投げてやってるもの。ああ、お母さんが生きててくれればなあ。さあ、僕たちは広い世の中に出ていこう。」と言いました。 二人は草地や野原や岩地を越えて丸一日歩きました。そして雨が降ると妹は「天と私たちの心が一緒に泣いてる。」と言いました。夜になって大きな森に着きました。悲しみと空腹と長歩きのためとても疲れていたので木のほらに横になり、眠りました。次の日、太陽はすでに空高くのぼっていて、木の中を暑く照らしていました。それで兄は「妹よ、僕はのどがかわいた。小さな小川のことを知ってれば、行って水を飲むのだけど。水の流れる音が聞こえるような気がする。」と言いました。兄は立ち上がって妹の手をとりました。それから二人で小川を探しに出発しました。しかし意地が悪い継母は魔女でした。そして二人の子供たちが出ていく様子を見ていて、密かに、魔女が忍び寄るやり方で、あとをつけていて、森の小川に全部魔法をかけていたのでした。 さて、石に明るくはねている小川を見つけたとき、兄はそこから水を飲もうとしました。しかし妹は水が流れながら「ここから水を飲む者はトラになる。ここからメルヘン 読む →
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六羽の白鳥

六羽の白鳥昔、ある王様が大きな森で狩りをしていて、野生の動物をとても熱心に追いかけたので従者のだれもあとについていけませんでした。夜が近づいてきて止まり、周りを見回すと道に迷ったことがわかりました。出口を探しましたが、まるで見つかりませんでした。それからしきりに頭を縦に振っている老婆が自分の方に来るのに気付きました。しかし、その老婆は魔女でした。「おばあさん、森を抜ける道を教えてもらえませんか?」と王様は老婆に言いました。「いいですよ、王様。」と老婆は答えました。「もちろんいいですよ。だけど、1つ条件があります。もしそれを果たさなければ絶対森からでられなくて森の中で餓死するでしょう。」と老婆は答えました。 「それはどんな条件だね?」と王様は尋ねました。「私には娘が一人いる。世界のだれよりも美しく、あなたの妃になる価値は十分あります。もし娘を妃にするなら、森から出る道を教えましょう。」と老婆は言いました。心苦しいままに王様は承知しました。そして老婆は王様を小さな小屋に連れて行き、娘は暖炉のそばに座っていて、まるで予期していたように王様を迎えました。王様は娘がとても美しいとわかりましたが、それでも気に入りませんでした。そして心ひそかにぞっとしないでは見られませんでした。王様が娘を馬に乗せ、老婆が道を案内して王様は再び王宮に着きました、そして結婚式が祝われました。 王様はすでに一度結婚したことがあメルヘン 読む →
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ヨリンデとヨリンゲル

ヨリンデとヨリンゲル昔、大きなうっそうとした森の真ん中に古い城があり、そこには魔女のばあさんがひとりっきりですんでいました。ばあさんは昼は猫やふくろうに変身しましたが、日が暮れるとまたふつうの人間の姿になりました。また、けものや鳥をおびき寄せ、殺して煮たり焼いたりしました。城から百歩内に入った人は、立ち止まったきり、ばあさんが魔法を解くまでその場から動けなくなりました。しかし、けがれのない娘がこの範囲に入ると、ばあさんはその娘を鳥に変え、柳の鳥かごに閉じ込め、城の部屋に運び込みました。城の中には珍しい鳥のかごが七千ほどありました。 さて、あるとき、ヨリンデという娘がいて、他のどの娘よりもきれいでした。ヨリンデとヨリンゲルというハンサムな若者は結婚の約束をしていました。二人はまだいいなずけの日々を過ごし、一緒にいることが一番の幸せでした。ある日、静かに語り合うために二人は森へ散歩にいきました。「気をつけて」とヨリンゲルは言いました。「城に近づきすぎないように。」美しい夕方でした。太陽が木々の幹の間から暗い森の緑に明るく射し込み、キジバトがブナの木の上でもの悲しく鳴いていました。ヨリンデは時々泣き、日なたに腰を下ろすと切なそうにしていました。ヨリンゲルも悲しく、二人は今にも死ぬかと思うくらい切なかったのです。そのとき二人は周りを見回して、すっかり途方にくれました。というのは家に帰る道がわからなかったからでメルヘン 読む →
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狼と狐

狼と狐狼は狐を従えていました。狼が望んだことは何でも狐はやらされました。というのは狐の方が弱かったからで、できれば主人と喜んでおさらばしていたでしょう。あるとき二人が森を通っていたとき、狼が、「赤狐、何か食べ物をとってこい、でないとお前自身を食っちまうぞ」と言いました。狐は「2匹の子羊がいる農家の庭を知っています。もしよろしければ1匹とりましょう。」と答えました。狼はそれがいいと思い、二人でそこへ行きました。そして狐は子羊を盗み、狼のところへ持っていき、行ってしまいました。狼はがつがつ子羊を食いましたが、一匹では満足しませんでした。それでもう1匹も欲しくなり、それを手に入れるためでかけました。 しかし狼はやるのがとても下手くそだったので、子羊の母が聞きつけ、激しく叫びたてメエメエなくので、農夫たちがそこへ走ってきました。そして狼を見つけ、とても情け容赦なくぶったので、狼は足を引きずり、うめきながら、狐のところへ行きました。「お前はおれをうまくだましやがったな。もう1匹の子羊も欲しかったのに、農夫たちが急にやってきて、おれをめちゃくちゃにぶちやがった。」と狼は言いました。狐は「どうしてあなたはそんな食いしん坊なんですか?」と言いました。 次の日、二人はまた田舎に行きました。食い意地のはってる狼は、もう一度「赤狐、何か食べ物をとってこい、でないとお前自身を食っちまうぞ」と言いました。すると狐メルヘン 読む →
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歌う骨

歌う骨昔、ある国で、農地を荒らし、家畜を殺し、牙で人の体を引き裂くイノシシがいて、人々は大いに嘆いておりました。王様は、この悩みの種を国からなくしてくれる者に沢山のほうびをとらすと約束しました。しかし、その獣はとても大きくて強いので、誰もあえてそれが住んでいる森に近づこうとはしませんでした。とうとう王様は、そのイノシシをつかまえるか殺した誰でも自分の一人娘を妻にできるとお触れを出しました。 さて、その国に、貧しい男の息子の二人兄弟が住んでいました。兄はずる賢く抜け目がないのでうぬぼれから、弟は素朴で真面目なので親切心から、この危険な仕事を喜んでひきうけると名乗りを上げました。王様は「もっと確実に獣を見つけるためには、二人は森へ反対側からはいらねばならない。」と言いました。それで兄は西側から、弟は東側から入りました。弟が少し行くと、小人が彼に近づいてきました。彼は手に黒いヤリを持ち、「お前の心は純粋でよいからこのヤリをあげよう。このヤリでお前は堂々とイノシシを攻撃できる、そしてそれはお前に危害を加えないのだ。」と言いました。弟はその小人に礼を言い、ヤリを肩にかけると、恐れることなく進んでいきました。 まもなく、その獣がみえました。弟をめがけて突進してきましたが、しかし、ヤリをそちらにむけて構えていて、イノシシはやみくもな激しさでヤリに突進したので心臓が二つに割れてしまいました。それからそのメルヘン 読む →
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ズルタンじいさん

ズルタンじいさん昔、お百姓がズルタンという名前の忠実な犬を飼っていましたが、年をとって歯が全部なくなってしまったので、もうなにも咥えることができませんでした。ある日、お百姓は、おかみさんと戸口の前に立っていて、「明日、年寄りのズルタンを撃ち殺すつもりだ、もう役に立たないからな。」と言いました。おかみさんは、忠実な犬を哀れに思って、「ズルタンはわたしたちにとても長く仕えてくれて、とても忠実だったのだから、飼っていた方がいいわ。」と答えました。「何だって?お前はあまり頭がよくないな。あれには歯が一本もないんだぞ。一人の泥棒もあれをこわがらないよ。もういらないよ。おれたちに仕えたとすれば、その分たっぷりえさをもらったさ。」と男は言いました。 可哀そうな犬は、近くのひなたで体を伸ばしねていて、これが全部聞こえ、明日が自分の最後の日になるんだなと悲しくなりました。犬にはいい友達の狼がいて、夜にそっと出て森の狼のところへ行き、自分を待っている運命のことをこぼしました。「ね、元気を出せよ、お前を難儀から救ってやるからさ。いいことを思いついたよ。明日朝早く、お前の主人はおかみさんと一緒に干し草を作りに行くよな。それで子供も一緒に連れて行くだろ。だれも家に残ってないからね。仕事中、子供をやぶの日陰にいつもおいとくから、その子を守りたいみたいにしてお前もそこにねるんだ。それでおれが森から出てきて子供を連れ去るよ。お前メルヘン 読む →
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踊ってすりきれた靴

踊ってすりきれた靴昔、どの娘も他の娘におとらないくらい美しい12人の娘がいる王様がいました。娘たちはみなベッドが並んでいる一つの部屋で一緒に眠っていました。そして娘たちがベッドに入ると王様は戸に鍵をかけかんぬきをしました。しかし、朝に戸の鍵をはずすと、王様は娘たちの靴が踊りですりきれているのがわかり、だれもどうしてそうなるのか発見できませんでした。それで、王様は、娘たちが夜どこで踊っているのか発見した者には娘の一人を妻に選ばせ、自分の死後王にする、但し、申し出て3日3晩のうちに発見できなかったものは命を差し出さねばならない、というお触れを出しました。 まもなく一人の王子が出て、この企てを引き受けると申し出ました。王子は暖かく迎えられ、夜には王女たちの寝室の隣の部屋に案内されました。王子のベッドはそこにおかれ、娘たちがどこへ行っておどるのか見ることになっていました。そしてこっそりと何かしたり他の場所に行かないように娘たちの部屋の戸は開けておかれました。しかし、王子のまぶたは鉛のように重くなり、眠ってしまいました。そして朝目覚めてみると、12人の娘はみな踊りに行ってきていました。というのは靴の底に穴があいていたからです。2日目と3日目の夜も違いがなく、それで王子の頭は情け容赦なくうちおとされました。 このあと他にもたくさんの人が来て、その企てを引き受けましたが、全員が命を落としました。さて、怪我をしてもメルヘン 読む →
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12人兄弟

12人兄弟昔、一緒に幸せに暮らし、12人の子供がいる王様とお后様がいました。しかし子供たちはみんな男の子で、あるとき王様は「今度生まれてくる13人目の子供が女の子なら、その子の財産が大きくなって国がその子だけのものになるように、12人の男の子は殺そう。」と妻に言いました。王様は12個の棺まで作らせ、もうかんなくずも詰められて、それぞれに小さな死枕もありました。そしてその棺を錠をかけた部屋に持っていかせ、その鍵をお后に渡して、だれにもこのことを話さないようにと命じました。 しかし、母親は今や一日中座って嘆いていました。それでとうとう、いつも母親と一緒にいて、聖書からベンジャミンと名づけていた一番下の息子が、「お母様、どうしてそんなに悲しいの?」と訊きました。 「かわいい子よ、お前に言えないのだよ。」とお后は答えました。しかし、息子がしきりに聞くのでとうとうお后は行って部屋の鍵をはずし、かんなくずが詰められ準備ができている12個の棺を見せました。それから、「かわいいベンジャミンや、お前の父はこれらの棺をお前とお前の兄たちのために作らせたのだよ。それも、私が女の子を産んだら、お前たちはみんな殺されこの棺に埋められることになっているの。」と言いました。こう言っている間も泣いているので、息子は慰めて、「泣かないで、お母様、僕たちは助かってここを出て行くよ。」と言いました。しかしお后は「11人の兄たちとメルヘン 読む →
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背嚢と帽子と角笛

背嚢と帽子と角笛昔、3人の兄弟がいましたが、だんだん貧しくなり、とうとうあまりに貧しくて空腹を我慢しなくてはなりませんでした。何も食べたり飲んだりするものがなかったのです。それで「こんな風に続けていられない。世界に出て運を試してみたほうがいいよ。」と言いました。従って3人は出かけていき、すでに沢山の道と沢山の草の上を歩きましたが、幸運にはあっていませんでした。ある日、大きな森に着き、その真ん中に丘があり、近寄ってみるとその丘は全部銀でした。それで長男は「今おれは望んだ幸運を見つけたよ。もうこれ以上何も欲しくないよ。」と言って、運べるだけ多くの銀をとり、向きを変えるとまた家に帰りました。 しかし他の二人は「幸運からただの銀よりもっと多くの何かが欲しい。」と言って、銀には触れず、道を進みました。止まらずに2日長く歩いたあと、全部金の丘に着きました。2番目の兄は立ち止まり、心の中で考えましたが、決心できませんでした。「どうしようか。この金を沢山持っていって残りの人生は十分になるだろうか。それとももっと行こうか?」とうとう決心がついて、ポケットに入るだけ多く詰め込んで、弟にさよならを言うと家に帰りました。 しかし3番目は、「金銀は僕を感動させない。僕は運試しの機会を捨てないぞ。多分もっといいものがまだ与えられるだろう。」と言って旅を続けました。3日歩いたとき、前の森より更に大きく、決して果てに着きそうもなメルヘン 読む →
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黄金の鳥

黄金の鳥昔、王様がいて、宮殿の裏に、金のリンゴが実る木がある美しい庭をもっていました。リンゴが熟してくると数がかぞえられましたが、その次の朝、1個がなくなっていました。このことが王様に報告され、王様は、毎晩木の下で見張りをするように、と命令しました。王様には三人の息子がいて、夜がくると長男を庭に送りましたが、真夜中になると、眠気を抑えられず、次の朝またりんごが1個なくなりました。 次の夜、次男が見張りをすることになりましたが、結果は兄と同じく、12時になると眠ってしまい、朝にはりんごが1個なくなっていました。いよいよ3男が見張りをする順番がきて、すっかりその気になっていましたが、王様はこの息子にあまり期待を持たないで、兄たちよりさらに役に立たないだろうと考えましたが、とうとう行かせました。若者は木の下に横になりましたが、目を覚まして、眠気に負けないようにしていました。12時を打つと、何か空をバサバサという音をさせ、月の明かりで羽が金で輝いている鳥が来るのが見えました。 鳥は木に止まると、リンゴを1つとりました。そのとき若者は鳥めがけて矢を射ました。鳥は飛んで去りましたが、矢は羽にあたり、金の羽の一枚が落ちてきました。若者はそれを拾い、次の朝王様のところに持って行って、夜に見たことを話しました。王様が相談役たちを呼び集めると、みんなが、このような羽は王国全部以上に価値がある、と言いました。もメルヘン 読む →
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フリーダーとカーテルリースヒェン

フリーダーとカーテルリースヒェン昔、フレデリックという男とキャサリンという女がいました。二人は結婚して間もない若い夫婦でした。ある日、フレデリックは、「キャサリン、今日は畑を耕しにいくよ。戻ってきたら、腹が減ってるからなにか焼いた食べ物と喉の渇きをうるおすさわやかな飲み物を食卓に用意しておいてくれ。」と言いました。「いってらっしゃい、あなた、行っていいわ、ちゃんと用意しとくから。」とキャサリンは答えました。 それで食事時が近づいてきたとき、キャサリンは煙突から一本のソーセージをとってフライパンに入れ、バターを塗って火にかけました。ソーセージが焼けてジュージューいい出し、キャサリンはそのそばに立ってフライパンの柄を握っていましたが、そうしながら考え事をしていました。すると、(ソーセージをやっている間に地下室に行ってビールを注いで来れるわ)と思いつきました。そこでフライパンをしっかり火にかけると、ジョッキを持ってビールをとりに地下室に下りていきました。ビールがジョッキに入っていき、キャサリンはそれを見ていました。すると、(あれ、上の犬をつないでなかったわ。ソーセージをフライパンからとっていくかもしれない、よかった、思いついて。)と思いました。 たちまち地下室の階段を駆け上がりましたが、スピッツはもうソーセージを口にくわえ、床を引きずって逃げていました。しかしキャサリンは、ぐずぐずしないで、すぐにあとをつけ、はるか畑のメルヘン 読む →
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蜜蜂の女王

蜜蜂の女王二人の王様の息子が冒険を求めて出かけましたが、すさんだだらしのない生活にはまってしまったので戻って来ませんでした。末の息子は、抜け作と呼ばれていましたが、兄たちを探しにでかけました。しかしやっと見つけると、兄たちは、ずっと賢いおれたちでもやって行けないのに、このおめでたい弟が世の中を渡れると思ってるとはちゃんちゃらおかしい、とばかり嘲り笑いました。 三人は一緒に旅をしていくと、蟻の巣がありました。すると二人の兄は、これを壊そうぜ、小さなアリのやつら、慌てふためいてうろうろ卵を運んでいくだろうよ、と言いました。しかし抜け作は、「ほっといてやってくれよ、兄さんたちがありの邪魔をするのを黙ってみてられないよ。」と言いました。それから進んでいくと湖にでました。そこにはたくさんのカモが泳いでいました。二人の兄は二、三羽捕まえて焼き肉にしようとしました。しかし抜け作はそれを許そうとしないで、「ほっといてやってくれ。兄さんたちがカモを殺すのは我慢できないよ。」と言いました。 やがて蜂の巣のところにさしかかりました。そこではたくさん蜂蜜があって巣がついている木の幹から垂れていました。二人の兄は、木の下で火を燃やし蜂の息をとめよう、そうして蜂蜜をとろうぜ、と言いました。しかし抜け作はまた二人を止め、「ほっといてやれよ、兄さんたちが蜂を焼くのは黙って見てられないよ」と言いました。 とうとう三人の兄弟はメルヘン 読む →
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悪魔とそのおばあさん

悪魔とそのおばあさん大きな戦があり、王様にはたくさんの兵士がいましたが、給料を少ししかあげなかったので、兵士たちは暮らしていけませんでした。それで三人の兵士が内緒で逃げることに決めました。一人の兵士があとの二人に、「つかまれば首つり台につるされるぞ。どうやってやるんだ?」と言いました。もう一人が、「あの大きな麦畑を見ろよ。あそきに隠れたら、誰も見つけられないさ。軍隊はそこに入ってはいけないんだし、明日出ていくんだからね。」と言いました。三人はうまく麦の間に這っていきましたが、ただ軍隊は出発しないで、そのまわりにい続けました。三人は二日二晩麦の中にとどまって、とてもお腹がすき、死ぬばかりになりました。しかし、もし出ていけば、死ななくてはいけないのが確かでした。それで三人は、「ここで惨めに死ななければならないなら、逃げて何の役に立つんだ?」と言いました。 しかし、火のような竜が空を飛んできて、三人のところに下り、どうしてそこに隠れているのかと尋ねました。三人は、「おれたちは、給料がひどすぎるから逃げてきた三人の兵士なんだ。それで今、ここにいれば飢え死にしなくてはならないだろうし、出て行けば首つり台にぶらさがらなくてはならないのさ。」と答えました。「もしわしに7年仕えてくれれば」と竜は言いました。「だれもお前たちをつかまえないように軍隊の中を連れ出してやるぞ。」「おれたちには選べないよ。受けるしかない。」とメルヘン 読む →
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かぶ

かぶ昔、二人の兄弟がいて、二人とも兵士として務めましたが、一人は金持ちで、もう一人は貧乏でした。すると貧しい男は、貧乏から抜け出そうと思い、兵士の服を脱ぎ捨て、お百姓になりました。男は少しばかりの土地を掘り起こし、かぶの種を播きました。種は芽を出し、一つのかぶが大きく丈夫に育って、みるみるうちにだんだん大きくなっていき、とどまる様子がありませんでした。それでかぶの王女と呼んでもよいくらいでした。というのは後にも先にもそんなに大きいかぶは見られないだろうからです。とうとうかぶは巨大になり、それだけで荷車いっぱいになったので、荷車を引くのに牛が二頭必要になりました。お百姓はかぶをどうすればよいか、そのかぶが自分にとって幸か不幸か、まるきり見当がつきませんでした。 おしまいに、(売ったら、大した金にもなるまい、自分で食べたとしても、まあ、小さなかぶだって味は同じだ、王様のところへ持って行って差し上げた方がよさそうだ)と考えました。そこで荷車にかぶを積み、二頭の牛に引かせて、王様のところへ持って行って贈り物にしました。「何とも珍しいものだ」と王様は言いました。「不思議な物はたくさん目にするが、こんなおばけかぶは初めてだ。どんな種からこのかぶはできたのかね?それともお前は幸運の申し子でたまたまそうなったのかね?」「いえいえ」とお百姓は言いました。「申し子なんかじゃございませんとも。私は貧しい兵士メルヘン 読む →
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勇ましいちびの仕立て屋

勇ましいちびの仕立て屋ある夏の朝、小さな仕立て屋は窓のそばの仕事台に座って、機嫌がよく一生懸命縫っていました。すると、下の通りをお百姓の女が、「いいジャムだよ、安いよ、いいジャムだよ、安いよ」と叫んで来ました。これは仕立て屋の耳に心地よく聞こえました。仕立て屋はきゃしゃな頭を窓から伸ばし、「ここへ来てよ、おばさん、ここで品物が売れるよ。」と呼びました。女は重いかごを持って3段あがって仕立て屋のところに来ました。そして仕立て屋は女につぼを全部広げさせ、全部を調べ、持ち上げ、鼻で匂いを嗅ぎ、やっと、「おばさん、そのジャムはおいしそうだ。だから4オンス測ってくれ。四分の一ポンドでも構わないよ。」と言いました。 たくさん売れると思っていた女は、仕立て屋が望んだものを渡しましたが、ぷんぷん怒ってぶつくさ言いながら立ち去りました。「さて、このジャムを神様が祝福してくださいますように」と小さな仕立て屋は叫びました。「そして食べた私に健康と力を与えてくださいますように。」それで戸棚からパンを出し、ちょうど半分に切り、ジャムを塗りました。「これは苦くないだろう。」と仕立て屋は言いました。「だが食べる前に、上着を終わらせよう。」パンを近くに置いて、縫い続け、楽しくて、縫い目がだんだん大きくなりました。そのうちに甘いジャムの香りが壁に立ち昇り、そこにたくさんいたハエが匂いに惹かれて下りてきてパンにたかりました。「うわっ、誰がメルヘン 読む →
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手なしむすめ

手なしむすめ昔、ある粉屋が住んでいましたが、だんだん貧しくなっていき、とうとう風車小屋とその後ろにある大きなりんごの木以外何もなくなりました。あるとき、森へ木を取りに行くと、会ったことのない老人が近づいてきました。「どうして苦しんで木を切るんだい?お前を金持ちにしてやろう、風車小屋の後ろに立っているものをくれると約束してくれたらね。」と言いました。 粉屋は「それっていったい何だろう?ーああ、りんごの木か」と思い、「いいよ」と答え、その見知らぬ人に約束を書いて渡しました。しかし、その男はニヤニヤしながら、「3年経ったら、自分のものをとりにくるから」と言うと行ってしまいました。粉屋がうちに帰ると、妻が出迎えて「ねえ、あなた、このお金は急にどこから家の中に入ったのかしら?あっという間にどの箱も引き出しもいっぱいなのよ。誰も運んでこなかったし。どうしてこうなったかわからないわ。」と言いました。「森で会った知らない人が、大きな財産をくれると約束してくれたんだよ。おれは、お返しに、風車小屋の後ろに立っているものをあげると約束したんだよ。-大きなりんごの木をあげても全然構わないもんな。」と粉屋は言いました。妻は怯えて「まあ、あなた、それは悪魔だったにちがいありませんよ。りんごの木のことじゃなくて、娘のことを言ってたんですよ、娘は庭を掃いて風車小屋の後ろに立っていたんです。」と言いました。 粉屋の娘は美しく信メルヘン 読む →
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ものわかりのいいハンス

ものわかりのいいハンスハンスの母が、 「ハンスや、どごさ 行ぐの?」と尋ねました。 「グレーテルの どごさ」とハンスは答えました。 「じょずに やるんだよ」 「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」 「行て こへ、ハンス」 ハンスはグレーテルの家に行きます。 「え日だねぇ、グレーテル」 「よぐ 来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持て きた?」 「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」 グレーテルは、ハンスに針を一本やります。 「せばな、グレーテル」 「せば、ハンス」 ハンスはもらった針を干し草車に刺し、車のあとについて家に帰ってきます。 「たんだいま、おかさん」 「ハンス、帰たが、おめ、いんままで どごに いだだ?」 「グレーテルどごに いだや」 「おめ、グレーテルさ なに 持て いて けだの?」 「なも 持て いがねよ、もらて きたよ。」 「グレーテルは 何 くれだ?」 「針だよ」 「針 どごさ やた?ハンス」 「干し草車さ 刺したや」 「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、針だば 袖さ 刺して おぐもんだね」 「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」 「ハンスや、どごさ 行ぐの?」 「グレーテルのどごさ」 「じょずに やるんだよ」 「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」 「行て こへ、ハンス」 ハンスはグレーテルの家に行きます。 「いい日だねぇ、グレーテメルヘン 読む →
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犬と雀

犬と雀牧羊犬は、良い主人どころかろくにえさをくれない主人をもっていました。それで、もうそこにはいられなくなって、とてもしょんぼりと出ていきました。道ですずめに出会うと、すずめは、「犬の兄さん、どうしてそんなにしょげているんだい?」と言いました。犬は、「お腹がすいているに食べ物がなにもないんだ。」と答えました。するとすずめが、「兄さん、一緒に町においで。お腹をいっぱいにしてあげる。」と言いました。それで二人は連れ立って町に入って行きました。肉屋の前に来ると、すずめが犬に、「そこにいて。あんたに肉を一切れつついて落とすから。」と言いました。そうして売り台にとまり、誰も見ていないか確かめるために周りを見回し、端にある一切れを、しばらくつついたり引っ張ったりちぎったりして、とうとう滑り落としました。 すると、犬はそれをくわえてすみに走っていき食べました。すずめは、「さあ、一緒に別の店へ行こう、そうしたらお腹がいっぱいになるようにもう一切れとってあげるよ。」と言いました。犬が二切れ目も食べると、すずめは、「犬の兄さん、もうお腹いっぱいになった?」と尋ねました。「うん、肉はもう十分食べた。」と犬は答えました。「だけどパンはまだ食べてないよ。」すずめは、「それも食べさせてやるよ、おいで。」と言いました。それからすずめは犬をパン屋に連れていき、小さな丸パンを二、三個つついて転がりおとしました。犬がもっとメルヘン 読む →
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子ウサギのおよめさん

子ウサギのおよめさん昔、キャベツを植えているきれいな庭に住む母親と娘がいました。そして小さなウサギがそこに入り、冬にはキャベツを全部食べてしまいました。それで母親は娘に、「庭に行ってウサギを追い払ってね。」と言いました。 女の子は「シ、シ、ウサギ、あなたはうちのキャベツをみんな食べてしまうわ。」とウサギに言います。「おいで、お嬢さん、私の小さなウサギの尻尾に座って私のおうちに一緒においで。」とウサギはいいます。女の子は行きません。 次の日、ウサギはまたやって来てキャベツを食べます。それで母親は娘に「庭に行ってウサギを追い払ってね。」と言います。娘は「シ、シ、ウサギ、あなたはキャベツをみんな食べてしまうわ。」とウサギに言います。「おいで、お嬢さん、私の小さなウサギの尻尾に座って私のおうちに一緒においで。」とウサギはいいます。娘は断ります。 三日目、ウサギはまたやって来てキャベツを食べます。それで母親は娘に「庭に行ってウサギを追い払ってね。」と言います。娘は「シ、シ、ウサギ、あなたはキャベツをみんな食べてしまうわ。」とウサギに言います。「おいで、お嬢さん、私の小さなウサギの尻尾に座って私のおうちに一緒においで。」とウサギはいいます。 女の子が小さなウサギの尻尾に座ると、ウサギは遠く離れた自分の小さな家に連れていき、「さあ、緑のキャベツとアワ種を料理して。私は結婚式のお客を呼ぶからね。」と言います。それからメルヘン 読む →
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うまい商売

うまい商売昔、一人の農夫がいて、雌牛を市に連れて行き、七ターレルで売りました。家へ帰る途中で池を通らなければなりませんでした。もう遠くから蛙たちが、アク、アク、アク(*注)と鳴いているのが聞こえてきました。「うん、彼らは韻をふむことも理由もなく話してるんだ。おいらが受けとったのは7だよな、8じゃないよ。」と彼は思いました。水辺に着くと、彼は蛙たちに言いました。「間抜けな動物だよ、おまえたちゃあ。もっと分別がないのかい?7タ―レルだよ、8ターレルじゃないんだ。」しかし、蛙たちはただアクアク鳴いてるだけでした。「さあ、じゃあ、信じないなら、お前たちに数えてあげるよ。」そして、彼はポケットからお金をとりだすと、24グロッシェンを1ターレルに換算しながら、七ターレルを数えました。しかしながら、蛙たちは気にもかけず、やはりアクアク鳴いていました。「何だって!」と農夫は怒って叫びました。「お前たちがおいらより分別があるんなら、自分で数えてみろ!」とお金を全部水の中の蛙たちに投げつけました。彼はじっと立って、蛙たちが数え終わり、自分のお金を返してくれるまで待っていようと思いました。が、蛙たちは相変わらずで、アクアク鳴き続けるだけでした。おまけにお金を水から投げ返してもくれませんでした。彼は、やはり暫く待っていましたが、とうとう夜がきてしかたなく家へ帰るしかなくなりました。それで、蛙たちの悪口をいい、叫びまメルヘン 読む →
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命の水

命の水昔、病気の王様がいましたが、誰も王様がその病気から回復すると信じませんでした。王様には3人息子がいて、王様の病気を悲しんで宮廷の中庭に降りて行き、泣きました。そこへおじいさんが来て、なぜ悲しんでいるのか、と尋ねました。息子たちは、父親の病いが重く、どうにも治しようがないので死んでしまうだろう、と言いました。するとおじいさんは、「私はもうひとつの薬のことを知ってるよ。それは命の水だ。それを飲めばまた良くなるが見つけるのが難しいんだ。」と言いました。一番上の息子は、「なんとか見つけてみせる。」と言い、病気の王様のところへ行き、命の水を探しに行くことをお許しください、それだけがお父さんを救えるのですから、とお願いしました。「だめだ」と王様は言いました。「危険が大きすぎる、それよりむしろ私は死んだ方がましだ。」 しかしあまりしつこく頼むので、王様は了承しました。王子は心の中で、「僕が水を持ってくれば、お父さんに一番かわいがられ、国を継ぐことになる。」と考えました。それで王子は出発し、馬で少し行くと、道に小人が立っていて、王子に呼びかけ、「急いでどこへ行くんだい?」と言いました。「馬鹿なチビめ」と王子は、とても傲慢に言いました。「お前に関係ないだろ。」そして馬で進みました。しかし小人は怒って悪い願かけをしました。この後まもなく王子は渓谷に入りましたが、行けば行くほど山同士が近づいていき、とうメルヘン 読む →
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ならずもの

ならずものあるとき、おんどりがめんどりに、「もうクルミが熟しているころだ。一緒に山に行って腹いっぱい食べようよ。りすが全部とっていってしまわないうちにね。」と言いました。「そうね。」とめんどりは答えました。「さあ、一緒に楽しくやりましょう。」それから二人は山に出かけ、天気の良い日だったので夕方までいました。さて二人が腹いっぱい食べすぎたせいか、得意になり過ぎていたのかわかりませんが、とにかく歩いて帰る気になれなくて、おんどりはくるみの殻で小さな乗り物を作る破目になりました。用意ができると、めんどりはその乗り物にすわり、おんどりに、「あなたが自分を車につないでひっぱってよ。」と言いました。「僕がそうしたいって?」とおんどりは言いました、「自分で引っ張るくらいならおれは歩いて帰った方がいいよ。嫌だ、そんな話ではなかったよ。御者になって御者台に座るならいいけど、自分で引っ張るのはやらないよ。」 こうして二人が口げんかしていると、アヒルがグワッグワッ文句をつけて、「この泥棒め!だれがおれのクルミの山へ行けと言った?待て!痛い目にあわせてやる。」と言っておんどりめがけてくちばしを開けて走っていきました。しかし、おんどりもボケっとしていなくて、勇敢にアヒルにかかっていき、しまいに蹴爪でアヒルをかなり痛めつけたので、アヒルは勘弁してくれと頼み、罰として自分から乗り物につながれることにしました。それでおんどメルヘン 読む →