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グリム兄弟 (ページ 2)
26
千匹皮
昔、金色の髪の妻がいる王様がいました。お后はとても美しく、この世で同じくらい美しい人はみつかりませんでした。あるとき、お后は病気になって、もうすぐ死ぬにちがいないと感じたので、王様を呼び、「私が死んだあともう一度結婚したいなら、私と同じくらいきれいでない人、私のような金色の髪をしていない人はやめてくださいね。あなたはこのことを約束してくれないといけないわ。」と言いました。王様がそれを約束すると、お后は目を閉じ亡くなりました。 長い間、王様は心がいやされなくて、別の妻をもらうことを考えもしませんでした。ついに相談役たちが、「こうしていられないよ。私たちにお后がいるためには王様はもう一度結婚しなくてはいけない。」と言いました。そうして、亡くなったお后と同じくらい美しい花嫁を探しに、使者がはるばる遠くまで送られました。しかし、世界中どこを探しても誰も見つかりませんでした。また、たとえ見つかったとしても、あのような金色の髪をした人はだれもいなかったでしょう。それで使者たちは手ぶらで帰ってきました。 さて、王様には娘が一人いました。その娘は亡くなった母親と全く同じくらいきれいで、同じ金色の髪をしていました。娘が大きくなったとき、ある日、王様は娘を見て、なにからなにまで娘は亡くなった后に似ているとわかり、急に激しい愛を感じました。それで王様は相談役たちに「私は娘と結婚する。というのは娘は亡くな
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27
こわがることをおぼえるために旅にでた若者
ある父親に息子が二人いました。兄は賢くて気が利き、何でも出来ましたが、弟はまぬけで、何も習い覚えないし何もわかりませんでした。人々は弟を見ると、「父親に厄介をかけそうなやつがいる。」と言いました。何かしなければならないことがあると、それをやらされるのはいつも兄でしたが、しかし、時間が遅いとか夜に、道が墓地や他の陰気な場所を通るときに、父親が何かとってくるようにいいつけると、「えっ、嫌だよ、お父さん、そこには行かないよ。ぞっとするもの。」と答えました。兄は怖かったからです。また、夜に暖炉のそばで気味の悪い話がされると、聞いている人たちが時々「ええっ、ぞっとするよ。」と言いました。弟はすみに座って、他の人たちと一緒に聞き、どういうことを言ってるのかわかりませんでした。「いつも『ぞっとする、ぞっとする、ぞっとしない』と言ってるな。それも僕がわからない技にちがいない。」と弟は考えました。 さて、ある日、父親が弟に「よく聞けよ、そこのすみのやつ、お前は大きくなって力もでてきた。お前も自分で食っていく何かを習わなくちゃな。見てみろ、お前の兄はしっかり働いている。だが、お前はこれっぽちも稼がないんだからな。」と言いました。「それでね、お父さん」と弟は答えました。「何かを習いたい気はうんとあるんだ。本当に、もしやれるなら、ぞっとする方法を習いたいんだ。まだそれが全然わからないんだよ。」兄はこれを聞
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28
12人兄弟
昔、一緒に幸せに暮らし、12人の子供がいる王様とお后様がいました。しかし子供たちはみんな男の子で、あるとき王様は「今度生まれてくる13人目の子供が女の子なら、その子の財産が大きくなって国がその子だけのものになるように、12人の男の子は殺そう。」と妻に言いました。王様は12個の棺まで作らせ、もうかんなくずも詰められて、それぞれに小さな死枕もありました。そしてその棺を錠をかけた部屋に持っていかせ、その鍵をお后に渡して、だれにもこのことを話さないようにと命じました。 しかし、母親は今や一日中座って嘆いていました。それでとうとう、いつも母親と一緒にいて、聖書からベンジャミンと名づけていた一番下の息子が、「お母様、どうしてそんなに悲しいの?」と訊きました。 「かわいい子よ、お前に言えないのだよ。」とお后は答えました。しかし、息子がしきりに聞くのでとうとうお后は行って部屋の鍵をはずし、かんなくずが詰められ準備ができている12個の棺を見せました。それから、「かわいいベンジャミンや、お前の父はこれらの棺をお前とお前の兄たちのために作らせたのだよ。それも、私が女の子を産んだら、お前たちはみんな殺されこの棺に埋められることになっているの。」と言いました。こう言っている間も泣いているので、息子は慰めて、「泣かないで、お母様、僕たちは助かってここを出て行くよ。」と言いました。しかしお后は「11人の兄たちと
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29
マレーン姫
昔、息子が一人いる王様がいました。その息子が強大な王様の娘に結婚を申し込みました。娘はマレーン姫といい、とても美しい人でした。その王子は、父親が娘を別の人に嫁がせたかったので、断られましたが、二人はお互いを心から愛していたので、あきらめようとしませんでした。マレーン姫は父親に、「私は他の方は夫にしませんし、できません。」と言いました。それで王様は怒って、日の光や月の光が入らない暗い塔を建てるよう命令し、塔ができあがると、「そこにお前を7年間閉じ込めておくぞ。その時、お前のつむじ曲がりが直ったかどうか見にくるとしよう。」と言いました。 7年間の食べ物と飲み物が塔に運び込まれ、そのあと王女と侍女が塔に連れ込まれ壁がふさがれて、天と地から切り離されました。二人はそこで暗闇の中に座り、いつ昼や夜が始まったかわかりませんでした。王様の息子はたびたび塔をぐるぐる回り、二人の名前を呼びましたが、外からの音は厚い壁をつらぬきませんでした。二人に嘆き悲しみ泣きごとを言う他にいったい何ができたでしょう。 やがて時が経ち、食べ物と飲み物が少なくなってきたので、二人は7年が終わりにきているとわかりました。解き放たれる時がきたと思いましたが、槌の音も聞こえなければ壁から石も落ちなくて、マレーン姫には父親が自分を忘れてしまったように思われました。二人にはあと少しの間だけの食べ物があるだけで、惨めな死が待ち構え
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幸せハンス
ハンスは主人に七年仕えました。それで主人に「だんなさま、年季が明けました。もうくにの母のところに帰りたいんです。お手当をください。」と言いました。主人は「お前はかげひなたなくよく働いてくれた。それだけちゃんと手当てもはずむぞ。」と答えて、ハンスに頭と同じくらい大きい金の塊を渡しました。ハンスはポケットからハンカチを引っ張り出し、その塊を包んで肩にかけ、故郷に帰りはじめました。 足を交互に出しながら進んでいくと、馬に乗った人が目にとまりました。元気のよい馬に乗って速く楽しそうに走っていくのです。「いいなあ!」とハンスは大声で言いました。「馬で行くってなんていいんだろう。椅子に座っているようにして、石につまずかないし、靴は擦り減らないし、それで知らないうちに先へ進むんだもんなあ。」馬の乗り手はその声が聞こえて止まり、「やあ、ハンス、じゃどうして歩いているんだい?」とさけびました。「歩かなくちゃいけないんですよ。」とハンスは答えました。「この塊を家に持って行くもんでね。確かに金なんだけど、このせいで頭をまっすぐにあげられないし、肩は痛いし。」「なあ」と乗り手が言いました。「取り変えようか。お前に馬をやろう、お前はその塊を私にくれよ。」「喜んで」とハンスは言いました。「だけど言っておきますよ、あんたはこの塊を這いつくばって運ばなくちゃなりませんよ。」乗り手は降りて金を受け取り、ハンスを馬に
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手なしむすめ
昔、ある粉屋が住んでいましたが、だんだん貧しくなっていき、とうとう風車小屋とその後ろにある大きなりんごの木以外何もなくなりました。あるとき、森へ木を取りに行くと、会ったことのない老人が近づいてきました。「どうして苦しんで木を切るんだい?お前を金持ちにしてやろう、風車小屋の後ろに立っているものをくれると約束してくれたらね。」と言いました。 粉屋は「それっていったい何だろう?ーああ、りんごの木か」と思い、「いいよ」と答え、その見知らぬ人に約束を書いて渡しました。しかし、その男はニヤニヤしながら、「3年経ったら、自分のものをとりにくるから」と言うと行ってしまいました。粉屋がうちに帰ると、妻が出迎えて「ねえ、あなた、このお金は急にどこから家の中に入ったのかしら?あっという間にどの箱も引き出しもいっぱいなのよ。誰も運んでこなかったし。どうしてこうなったかわからないわ。」と言いました。「森で会った知らない人が、大きな財産をくれると約束してくれたんだよ。おれは、お返しに、風車小屋の後ろに立っているものをあげると約束したんだよ。-大きなりんごの木をあげても全然構わないもんな。」と粉屋は言いました。妻は怯えて「まあ、あなた、それは悪魔だったにちがいありませんよ。りんごの木のことじゃなくて、娘のことを言ってたんですよ、娘は庭を掃いて風車小屋の後ろに立っていたんです。」と言いました。 粉屋の娘は美しく信
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奇妙な音楽家
昔、不思議な音楽家がいました。この音楽家が、まったく一人で森を通っていろいろなことを考えていましたが、何も考えることが残ってなくなった時、(この森では時間の経つのがいやに遅いなあ。いい連れを見つけよう。)と思いました。それから、背中からバイオリンをとり、ひくと、音が木々の間にこだましました。まもなく一匹の狼が茂みから駆けてきました。「ああ、狼が来るよ。狼は欲しくないな。」と音楽家は言いましたが、狼は近づいて来て、「ああ、音楽家さん、なんてきれいにひくんでしょう。私もそれを習いたいです。」と言いました。「すぐに習えるよ。」音楽家は言いました。「私がいいつける何でもやりさえすればいいんだ。」「まあ、音楽家さん、生徒が先生に従うように、私はあなたに従います。」と狼は言いました。音楽家は狼についてくるように言いました。しばらく道を進んだ時、中にうろがあり真ん中が割れている古い樫の木のところに来ました。「見ろよ、バイオリンを習うなら、前足をこの割れ目に入れろ。」と音楽家は言いました。狼は従いました。しかし、音楽家は素早く石を拾い、ひとうちであっというまに二本の前足をくさびのように押し込んだので、狼は囚われてそこにいるしかなくなりました。「私が戻るまでそこで待ってろ。」と音楽家は言って、道を進みました。 しばらくして、音楽家は、「この森では時間の経つのがいやに遅いなあ。別の連れをこっちへ呼ぼう
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漁師とおかみ
昔、海のすぐちかくの豚小屋に、漁師がおかみさんと一緒に住んでいました。漁師は毎日魚釣りにでかけ、釣って、釣って、ひたすら釣りました。あるとき、竿を垂れて座り、きれいな水を眺めながら、ひたすら座っていました。すると糸がグイッと下がってずっと下までおりました。糸を引き上げてみると大きなヒラメがかかっていました。するとヒラメが言いました。「聞いてください、漁師さん、お願いです。命を助けてください。私は本当はヒラメではなく、魔法にかけられた王子なのです。私を殺して何になりますか。私を食べてもおいしくないです。また水に戻して、放してください。」「まあ、いいだろ」と漁師は言いました。「そんなに言わなくてもいいよ。口をいう魚なんてどっちにしても放してやるさ。」そう言って漁師はヒラメをきれいな水に戻しました。ヒラメは後ろに長い血のすじを残して、底に行きました。 それから猟師は立ち上がって豚小屋のおかみさんのところに帰りました。「あんた」とおかみさんは言いました。「今日は何もとれなかったの?」「ああ」と亭主は言いました。「実はヒラメを釣ったんだがね、そいつが魔法にかけられた王子だというもんだから、逃がしてやったよ。」「先に願い事を言わなかったのかい?」とおかみさんは言いました。「ああ、言わなかった。」と亭主は言いました。「何を願うんだい?」「まあ」とおかみさんは言いました。「こんな豚小屋でいつまでも
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白蛇
昔、知恵があることで国中に評判の王様が住んでいました。王様が知らないことは何もなく、まるで最も秘密なことがらが空中から王様に伝わってくるかのようでした。しかし、王様には奇妙な習慣があり、毎日夕食後、食卓が片付けられ誰もいなくなると、信頼のおける家来がもう一つ料理を持ってこなければならないのでした。しかしその料理はふたをされ、その家来ですら中に何が入っているのか知りませんでした。また他の誰も知りませんでした、というのは王様は全く一人きりになるまでそれを食べるために決してふたをとらなかったからです。 この習慣が暫く続いたある日、家来は、料理を運んでいて、どうしても好奇心をおさえきれなくなって自分の部屋に料理を運びました。用心深くドアに鍵をかけたあと、ふたを持ち上げてみると、皿の上に一匹白い蛇がのっていました。しかし、家来は、その蛇を見ると、食べて味わってみたい気持ちをおさえられず、小さい一切れを切りとって口に入れました。その切り身が舌に触れるや否や、窓の外から小さい声の奇妙なささやきが聞こえてきました。行って耳をかたむけると、スズメがぺちゃくちゃ野や森で見たあらゆることについて話し合っているのでした。蛇を食べたことで動物の言葉を理解する力がついたのでした。 偶然にも、まさにこの日、お妃さまがもっとも美しい指輪を失くして、この家来はどこへ行くことも許されていたので、泥棒の疑いがかかりまし
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命の水
昔、病気の王様がいましたが、誰も王様がその病気から回復すると信じませんでした。王様には3人息子がいて、王様の病気を悲しんで宮廷の中庭に降りて行き、泣きました。そこへおじいさんが来て、なぜ悲しんでいるのか、と尋ねました。息子たちは、父親の病いが重く、どうにも治しようがないので死んでしまうだろう、と言いました。するとおじいさんは、「私はもうひとつの薬のことを知ってるよ。それは命の水だ。それを飲めばまた良くなるが見つけるのが難しいんだ。」と言いました。一番上の息子は、「なんとか見つけてみせる。」と言い、病気の王様のところへ行き、命の水を探しに行くことをお許しください、それだけがお父さんを救えるのですから、とお願いしました。「だめだ」と王様は言いました。「危険が大きすぎる、それよりむしろ私は死んだ方がましだ。」 しかしあまりしつこく頼むので、王様は了承しました。王子は心の中で、「僕が水を持ってくれば、お父さんに一番かわいがられ、国を継ぐことになる。」と考えました。それで王子は出発し、馬で少し行くと、道に小人が立っていて、王子に呼びかけ、「急いでどこへ行くんだい?」と言いました。「馬鹿なチビめ」と王子は、とても傲慢に言いました。「お前に関係ないだろ。」そして馬で進みました。しかし小人は怒って悪い願かけをしました。この後まもなく王子は渓谷に入りましたが、行けば行くほど山同士が近づいていき、とう
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兄と妹
兄は妹の手をとり、「お母さんが亡くなってから僕たちは全然幸せじゃないね。義理のお母さんは毎日僕たちをぶって、近くへ寄ると足で蹴ったり。ごはんは残り物のパンくずだし。テーブルの下にいる犬の方がましな暮らしをしてるよ。だって、あの人は選んだご馳走をよく投げてやってるもの。ああ、お母さんが生きててくれればなあ。さあ、僕たちは広い世の中に出ていこう。」と言いました。 二人は草地や野原や岩地を越えて丸一日歩きました。そして雨が降ると妹は「天と私たちの心が一緒に泣いてる。」と言いました。夜になって大きな森に着きました。悲しみと空腹と長歩きのためとても疲れていたので木のほらに横になり、眠りました。次の日、太陽はすでに空高くのぼっていて、木の中を暑く照らしていました。それで兄は「妹よ、僕はのどがかわいた。小さな小川のことを知ってれば、行って水を飲むのだけど。水の流れる音が聞こえるような気がする。」と言いました。兄は立ち上がって妹の手をとりました。それから二人で小川を探しに出発しました。しかし意地が悪い継母は魔女でした。そして二人の子供たちが出ていく様子を見ていて、密かに、魔女が忍び寄るやり方で、あとをつけていて、森の小川に全部魔法をかけていたのでした。 さて、石に明るくはねている小川を見つけたとき、兄はそこから水を飲もうとしました。しかし妹は水が流れながら「ここから水を飲む者はトラになる。ここから
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六羽の白鳥
昔、ある王様が大きな森で狩りをしていて、野生の動物をとても熱心に追いかけたので従者のだれもあとについていけませんでした。夜が近づいてきて止まり、周りを見回すと道に迷ったことがわかりました。出口を探しましたが、まるで見つかりませんでした。それからしきりに頭を縦に振っている老婆が自分の方に来るのに気付きました。しかし、その老婆は魔女でした。「おばあさん、森を抜ける道を教えてもらえませんか?」と王様は老婆に言いました。「いいですよ、王様。」と老婆は答えました。「もちろんいいですよ。だけど、1つ条件があります。もしそれを果たさなければ絶対森からでられなくて森の中で餓死するでしょう。」と老婆は答えました。 「それはどんな条件だね?」と王様は尋ねました。「私には娘が一人いる。世界のだれよりも美しく、あなたの妃になる価値は十分あります。もし娘を妃にするなら、森から出る道を教えましょう。」と老婆は言いました。心苦しいままに王様は承知しました。そして老婆は王様を小さな小屋に連れて行き、娘は暖炉のそばに座っていて、まるで予期していたように王様を迎えました。王様は娘がとても美しいとわかりましたが、それでも気に入りませんでした。そして心ひそかにぞっとしないでは見られませんでした。王様が娘を馬に乗せ、老婆が道を案内して王様は再び王宮に着きました、そして結婚式が祝われました。 王様はすでに一度結婚したことがあ
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ヨリンデとヨリンゲル
昔、大きなうっそうとした森の真ん中に古い城があり、そこには魔女のばあさんがひとりっきりですんでいました。ばあさんは昼は猫やふくろうに変身しましたが、日が暮れるとまたふつうの人間の姿になりました。また、けものや鳥をおびき寄せ、殺して煮たり焼いたりしました。城から百歩内に入った人は、立ち止まったきり、ばあさんが魔法を解くまでその場から動けなくなりました。しかし、けがれのない娘がこの範囲に入ると、ばあさんはその娘を鳥に変え、柳の鳥かごに閉じ込め、城の部屋に運び込みました。城の中には珍しい鳥のかごが七千ほどありました。 さて、あるとき、ヨリンデという娘がいて、他のどの娘よりもきれいでした。ヨリンデとヨリンゲルというハンサムな若者は結婚の約束をしていました。二人はまだいいなずけの日々を過ごし、一緒にいることが一番の幸せでした。ある日、静かに語り合うために二人は森へ散歩にいきました。「気をつけて」とヨリンゲルは言いました。「城に近づきすぎないように。」美しい夕方でした。太陽が木々の幹の間から暗い森の緑に明るく射し込み、キジバトがブナの木の上でもの悲しく鳴いていました。ヨリンデは時々泣き、日なたに腰を下ろすと切なそうにしていました。ヨリンゲルも悲しく、二人は今にも死ぬかと思うくらい切なかったのです。そのとき二人は周りを見回して、すっかり途方にくれました。というのは家に帰る道がわからなかったからで
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勇ましいちびの仕立て屋
ある夏の朝、小さな仕立て屋は窓のそばの仕事台に座って、機嫌がよく一生懸命縫っていました。すると、下の通りをお百姓の女が、「いいジャムだよ、安いよ、いいジャムだよ、安いよ」と叫んで来ました。これは仕立て屋の耳に心地よく聞こえました。仕立て屋はきゃしゃな頭を窓から伸ばし、「ここへ来てよ、おばさん、ここで品物が売れるよ。」と呼びました。女は重いかごを持って3段あがって仕立て屋のところに来ました。そして仕立て屋は女につぼを全部広げさせ、全部を調べ、持ち上げ、鼻で匂いを嗅ぎ、やっと、「おばさん、そのジャムはおいしそうだ。だから4オンス測ってくれ。四分の一ポンドでも構わないよ。」と言いました。 たくさん売れると思っていた女は、仕立て屋が望んだものを渡しましたが、ぷんぷん怒ってぶつくさ言いながら立ち去りました。「さて、このジャムを神様が祝福してくださいますように」と小さな仕立て屋は叫びました。「そして食べた私に健康と力を与えてくださいますように。」それで戸棚からパンを出し、ちょうど半分に切り、ジャムを塗りました。「これは苦くないだろう。」と仕立て屋は言いました。「だが食べる前に、上着を終わらせよう。」パンを近くに置いて、縫い続け、楽しくて、縫い目がだんだん大きくなりました。そのうちに甘いジャムの香りが壁に立ち昇り、そこにたくさんいたハエが匂いに惹かれて下りてきてパンにたかりました。「うわっ、誰が
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鉄のハンス
昔、一人の王様がいました。王様は、宮殿の近くには大きな森をもっていて、あらゆる種類の動物がいっぱいいました。ある日王様はノロジカを撃たせるため一人の猟師を送り出しましたが、猟師は戻ってきませんでした。「たぶん何か事故が起こったんだろう」と王様は言い、次の日、その猟師を探しにさらに二人の猟師を送り出しましたが、その二人も帰ってきませんでした。それで3日目には王様は猟師全員に、「森をくまなく探せ、3人全員を見つけるまであきらめるな。」と言って送り出しました。しかし、これらの猟師たちの誰もまた帰って来ませんでした。また一緒に連れて行った犬の群れも一匹も見られませんでした。そのときから、もう誰も森へ入ろうとはせず、森は暗く静かでひっそりしており、何も見られず、ただ時々ワシやタカがその上を飛んでいるだけでした。 こういう状態が何年も続いたあるとき、見知らぬ猟師が職を求めて王様に取り次ぎを願い、危険な森へ入ろうと申し出ました。ところが王様は承知しないで、「あそこは安全でないのだ。お前も他の者たちと同じ目にあうのではないか。二度と出てこれなくなるだろう。」と言いました。猟師は、「陛下、危険は承知の上です。怖くはありません。」と答えました。それで、猟師は犬を連れて森へ入りました。まもなく犬が道の獲物をかぎつけて追いかけようとしましたが、二足ほど走るとすぐ深い池の前に出て、それ以上進めなくなりました
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二人兄弟
昔、二人の兄弟がいて、一人は金持ちで、もう一人は貧乏でした。金持ちは金細工師で心の悪い人でした。貧しい方はほうき作りをして生計をたてていて、善良で心の清い人でした。この男には子供が二人いて、双子の兄弟で水の2滴のようにお互いにそっくりでした。二人の男の子は金持ちの家に出たり入ったりして、よく残り物をもらって食べていました。あるとき貧しい男がほうきの木をとりに森へ入って行こうとしていたとき、すっかり金色でこれまで出くわしたどの鳥より美しい鳥を見ました。小さな石を拾って投げて、うまく鳥に当たりましたが、1枚の金の羽根だけが落ちてきて、鳥は逃げてしまいました。男は羽根をとって兄のところへもっていきました。兄はそれを見て、「純金だ。」と言って、羽根と交換してたくさんのお金をくれました。次の日、男は樺の木に登り2,3本枝を切り取ろうとしたとき、同じ鳥が飛んで出てきました。それで男が探すと巣があり、中に1個の金でできた卵がありました。男は卵を持ち帰り、兄のところへ持っていきました。兄は今度も「純金だ。」と言って、その卵に相当する金額をくれました。最後に金細工師は「本当に、鳥そのものが欲しいなあ。」と言いました。貧しい男は3回目に森へ入って行き、また金の鳥が木に止まっているのを見ました。それで石をとって鳥を打ち落として、兄のところへ持って行きました。兄はそれと交換に山盛りの金をくれました。男は、
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金の鍵
地面に深い雪が積っている冬に、貧しい男の子は、そりで外に出て薪を集めてこなければなりませんでした。薪を集めてそりに積み込み終わると、あまりの寒さで凍えそうだったので、すぐには家に帰らないで火をつけて少し体を暖めたいと思いました。そこで雪をかきわけ、地面から雪をどけていると、小さい金の鍵を見つけました。鍵があるってことは錠前もあるに違いないと思い、地面を掘って、鉄の小箱を見つけました。「鍵が合いさえすればなあ!」と男の子は思いました。その小さな箱の中には高価な物が入っているにちがいないのです。男の子は探しましたが鍵穴がありませんでした。やっと見つけましたが、とても小さくほとんど見えないくらいの穴でした。鍵を試してみました。すると、鍵はぴったり合いました。そこで鍵を一回ぐるりと回しました。はい、男の子がすっかり錠をはずし終わり蓋を開けるまで、私たちは待たねばなりません。そうしたら、どんなに素晴らしい物がその箱に入っていたかわかるでしょう。
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43
白い花嫁と黒い花嫁
女が飼い葉を刈りながら実の娘と継娘と一緒に野原を歩いていました。そのとき神様が貧しい男の姿で三人の方に来て、「村に行く道はどっちかね?」と尋ねました。「知りたいなら自分で探すんだね」と母親は言いました。娘が付け加えて「見つからないと心配なら、案内人を連れて歩くことね」と言いました。しかし、継娘は「かわいそうに、そこにお連れしましょう、一緒にどうぞ。」と言いました。 それで神様は母親と娘に怒って二人に背を向け、二人が夜と同じくらい黒く、罪と同じくらい醜くなるように望みました。しかし可哀そうな継娘には神様は慈愛の目を向け、継娘と一緒に行きました。村に近づくと娘を祝福して、「3つ願いを選んでごらん。叶えてあげよう。」と言いました。それで乙女が「太陽のように美しく白くなりたいわ。」と言うと、すぐに乙女は昼のように白くきれいになりました。「それから決して空っぽにならないお財布が欲しいわ。」それも神様は娘に与えましたが、「一番よいものを忘れないように」と言いました。乙女は「3番目の願いとして、死んだあと、天国に住みたいと願うわ。」と言いました。それも神様は認めて、娘に別れていきました。 継母が実の娘と家へ帰った時、自分たちが炭と同じくらい黒く醜いけれど、継娘は白く美しいとわかりました。二人の心には意地悪い気持ちがさらに一層つのって、どうやって継娘を傷つけてやろうかとばかり考えていました。ところ
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一つ目、二つ目、三つ目
昔、三人の娘がいる女がいました。一番上の娘は、額にたった一つの目があったので、一つ目という名で、二番目の娘は、他の人たちのように二つの目があったので、二つ目という名で、一番下の娘は、目が三つあったので、三つ目という名でした。三つ目の三番目の目も額の真中にありました。ところが二つ目は他の人間たちと全く同じに見たので、姉妹と母親は二つ目が我慢できなくて、「お前は目玉が二つで、普通の人たちと同じだよ。お前は私たちの仲間じゃないよ。」と二つ目に言いました。みんなは二つ目を押しのけたり、古い服を投げつけ、残り物しか食べるものをあげず、二つ目を惨めにするためにできる何でもやりました。 二つ目は野原へでかけてヤギの世話をしなければなりませんでしたが、姉妹がほんの少ししか食べ物をくれなかったので、まだかなりお腹がすいていました。それであぜに座り、泣きだしました。とてもひどく泣いたので目から二つの川が流れました。そしてあるとき悲しみながら目をあげると、女の人が自分のそばに立っていて、言いました。「どうして泣いているんだね?二つ目」「泣かないでいられないの。他の人たちみたいに二つ目なので私の姉妹と母は私が嫌いで、あちらこちらへ押して、古い服を投げてよこすし、残り物しか食べ物をくれないの。今日は少ししかくれなかったからまだとてもお腹がすいてるの。」と二つ目は答えました。すると賢い女の人は、「涙を拭いて、
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45
糸くり三人女
昔、怠け者で糸を紡ごうとしない娘がいました。それで娘の母親は「どうしたってお前をその気にさせることはできやしない」と嘆いていました。ついに或るとき堪忍袋の緒がきれカッとなって母親は娘をなぐりました。それで、娘は大声で泣き出しました。丁度このときお妃さまが通りがかり、泣き声を聞いたので、馬車をとめ、家に入ると、母親に、どうして泣き声が道に聞こえるほど娘をなぐっているのか、と尋ねました。母親は娘の怠け癖をさらけ出すのは恥ずかしいと思い、「娘の心を糸紡ぎから離せないんです。娘は糸紡ぎをすると何度も何度も言い張るんです。私は貧しいし、亜麻を買うお金がないんです。」と言いました。するとお妃さまは「私は、糸紡ぎほど聞きたいものはないですよ。糸車が回っているときはこの上なく楽しいわ。娘を宮殿に連れて行かせて。私には亜麻が十分あるから、好きなだけ紡がせてあげる。」と言いました。母親はこれに心から満足し、お妃さまは娘を一緒に連れていきました。宮殿に着いたあと、お妃さまは娘を上から下まで最上等の亜麻でいっぱいの3つの部屋に案内しました。「さあ、この亜麻を紡いでおくれ。終わったら、私の一番上の息子と結婚させてあげましょう、たとえお前が貧乏でもね、そんなことを気にはしていないのよ、お前のひたむきな勤勉さが十分な持参金ですからね。」とお妃さまは言いました。 娘は内心ビクビクしていました。というのは、たとえ3
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森の中の三人の小人
昔、妻を亡くした男と、夫を亡くした女がいました。男には一人の娘がおり、女にもひとり娘がいました。娘たちはお互いと知り合いになり、一緒に散歩にでかけ、後に家にいる女のところへ来ました。そのとき、女は男の娘に「ねぇ、お父さんに私が結婚したがっていると言ってちょうだい。そしたらあなたを毎朝ミルクで体を洗わせ、ワインを飲ませてあげるわ。けど、うちの娘は水で体を洗わせ、水を飲ませるわ。」と言いました。その娘は家へ帰り、父親に女が言ったことを話しました。男は「どうしようかな?結婚は喜びでありまた拷問だからな。」と言いました。とうとう決めることができなかったので、男は長靴を脱ぎ、「この長靴を持ちなさい。底に穴があいているんだ。それを持って屋根裏に行って、大きな釘にかけなさい。それから中に水を入れなさい。もし水がもらなければもう一回妻をもらおう。だけど、水がもったらやめるよ。」と言いました。娘は言われた通りやりました。しかし、水は穴をふさいで長靴は上まで水でいっぱいになりました。娘は父親に結果がどうなったか告げました。それで男自身も上に行き、娘が正しいと見てとって、その未亡人のところへ行って求婚しました。そして結婚式が行われました。 次の朝、二人の娘が起きると、男の娘の前には体を洗うためのミルクと飲むためのワインがありましたが、女の娘の前には体を洗うための水と飲むための水がありました。2日目の朝に
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蜜蜂の女王
二人の王様の息子が冒険を求めて出かけましたが、すさんだだらしのない生活にはまってしまったので戻って来ませんでした。末の息子は、抜け作と呼ばれていましたが、兄たちを探しにでかけました。しかしやっと見つけると、兄たちは、ずっと賢いおれたちでもやって行けないのに、このおめでたい弟が世の中を渡れると思ってるとはちゃんちゃらおかしい、とばかり嘲り笑いました。 三人は一緒に旅をしていくと、蟻の巣がありました。すると二人の兄は、これを壊そうぜ、小さなアリのやつら、慌てふためいてうろうろ卵を運んでいくだろうよ、と言いました。しかし抜け作は、「ほっといてやってくれよ、兄さんたちがありの邪魔をするのを黙ってみてられないよ。」と言いました。それから進んでいくと湖にでました。そこにはたくさんのカモが泳いでいました。二人の兄は二、三羽捕まえて焼き肉にしようとしました。しかし抜け作はそれを許そうとしないで、「ほっといてやってくれ。兄さんたちがカモを殺すのは我慢できないよ。」と言いました。 やがて蜂の巣のところにさしかかりました。そこではたくさん蜂蜜があって巣がついている木の幹から垂れていました。二人の兄は、木の下で火を燃やし蜂の息をとめよう、そうして蜂蜜をとろうぜ、と言いました。しかし抜け作はまた二人を止め、「ほっといてやれよ、兄さんたちが蜂を焼くのは黙って見てられないよ」と言いました。 とうとう三人の兄弟は
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はつかねずみと小鳥と腸づめの話
昔、ネズミと鳥とソーセージが仲間になり、一緒に所帯を持って、仲良く幸せに暮らし、財産も増えました。鳥の仕事は毎日森へ飛んで行き、木を持ち帰ることでした。ネズミは水を運び、火をたき、食卓を整えるのが仕事で、ソーセージは料理をしました。暮らしが豊か過ぎる人はとかく目新しいことをやってみたくなるものです。ある日、鳥は別の鳥に会い、自分の素晴らしい暮らしぶりを語り自慢しました。ところが、相手の鳥は言いました。「あんたはきつい仕事をうけもって、かわいそうなおばかさんね、家にいる二人は楽しいでしょうね、だってネズミは火をおこし、水を運んで、あとは食卓を整えるように呼ばれるまで自分の部屋に行って休んでいるわけよ。ソーセージは鍋のそばにいて食べ物がよく煮えるか見て、食事の時間に近くなったら、おかゆとか野菜の間を一、二回転げ回るだけでバターや塩味がついて、はい準備OK。あんたが家に帰り、重い荷物を下ろすと、三人は食卓に座り、食事が終わると次の朝までたっぷり眠る。それが素晴らしい暮らしってわけだ。」 次の日、鳥は、相手の鳥にそそのかされて、もう森にいく気がしなくなって、自分はもう長く召使の役をやって馬鹿にされてきた、一度役割を変えて、別のやり方をしなくてはいけない、と言いました。ネズミとソーセージはとても一生懸命頼みましたが、鳥は頑固に譲らず、そうしなくてはいけない、と言いました。 三人はくじ引きをし
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つぐみの髭の王さま
ある王様に、はかり知れないほど美しい娘がいました。けれどとても高慢でその上横柄なので、どの求婚者も娘の気にいらなくて、求婚者を次々と追い返し、意地悪く笑い者にもしました。 あるとき、王様は大宴会を開き、そこへ遠近から結婚の相手となりそうな若者を招きました。若者たちは身分と地位に従って全員一列に整列させられました。最初は王様で、次は公爵、次は王子、伯爵、男爵、紳士階級がきました。それから王様の娘はそれぞれの身分の人の間を案内されましたが、どの人にもなにか異議を唱えました。一人は太りすぎていて、「酒樽ね」、背が高すぎると「やせでのっぽ、まるで役立たずね。」3人目は背が低すぎて「ちびのでぶはのろまよ。」、4人目は顔色が悪過ぎて「死神みたいね。」、5人目は顔が赤過ぎて、「見事なおんどりね。」、6人目は体が真直ぐでないので、「ストーブの後ろの乾かされた生木。」と言いました。 そんなふうに娘は一人ひとりに何か文句をつけましたが、列のかなり高い地位にいたりっぱな王様には特にはしゃいで、あごがすこし曲がっていたので、「ほら見て、つぐみのくちばしみたいなあごをしているわ。」と叫んで笑いました。その時からこの人はつぐみひげの王様の名前をもらいました。 しかし年とった王様は、娘が人々をあざ笑う以外何もしないで、そこに集まった求婚者みんなをばかにしたのを見ると、とても怒って、戸口に来た最初の乞食を娘の夫に
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うまい商売
昔、一人の農夫がいて、雌牛を市に連れて行き、七ターレルで売りました。家へ帰る途中で池を通らなければなりませんでした。もう遠くから蛙たちが、アク、アク、アク(*注)と鳴いているのが聞こえてきました。「うん、彼らは韻をふむことも理由もなく話してるんだ。おいらが受けとったのは7だよな、8じゃないよ。」と彼は思いました。水辺に着くと、彼は蛙たちに言いました。「間抜けな動物だよ、おまえたちゃあ。もっと分別がないのかい?7タ―レルだよ、8ターレルじゃないんだ。」しかし、蛙たちはただアクアク鳴いてるだけでした。「さあ、じゃあ、信じないなら、お前たちに数えてあげるよ。」そして、彼はポケットからお金をとりだすと、24グロッシェンを1ターレルに換算しながら、七ターレルを数えました。しかしながら、蛙たちは気にもかけず、やはりアクアク鳴いていました。「何だって!」と農夫は怒って叫びました。「お前たちがおいらより分別があるんなら、自分で数えてみろ!」とお金を全部水の中の蛙たちに投げつけました。彼はじっと立って、蛙たちが数え終わり、自分のお金を返してくれるまで待っていようと思いました。が、蛙たちは相変わらずで、アクアク鳴き続けるだけでした。おまけにお金を水から投げ返してもくれませんでした。彼は、やはり暫く待っていましたが、とうとう夜がきてしかたなく家へ帰るしかなくなりました。それで、蛙たちの悪口をいい、叫びま
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